【No.66】1歳の子どもが磁石を含む玩具を誤飲!対策方法は?

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手術や事故の様子などショッキングな表現や画像が含まれる場合があります。

1歳11ヶ月の男の子が、急な体調不良に見舞われる事故が発生しました。男の子は磁石を含む玩具を誤飲しており、誤飲の発覚までに3日かかっています。
最終的に男の子は無事に退院しましたが、複数の磁石は体内で干渉し合って腸閉塞を起こすこともあります。

本記事では、事故の原因や未然に防ぐための対策方法を日本小児科学会が公開した情報を元に紹介します。
同様の事故が起きないよう、それぞれのご家庭で対策方法を学びましょう。

事故発生の原因

男の子(1歳11ヶ月)は、2015年9月23日から日に1回ほどの水様便がでるようになりました。

25日の昼から3~4回嘔吐したため、26日に病院を受診します。男の子は急性胃腸炎が疑われ、投薬を受けて帰宅しました。その日の夕方、10回以上の嘔吐をし、夜間救急を受診しました。

27日から嘔吐と腹痛、発熱を認めるようになりました。休日の診療所を受診し、急性胃腸炎が疑われて点滴を受けました。

28日、再来院したところ、腹膜刺激症状、苦悶様顔貌を認めました。単純X線にて、腹部に球形異物とフリーエアーを認めました。

病院の治療・手術

大学病院の小児外科で緊急開腹手術が行われました。
内瘻形成と2カ所に小腸穿孔を認め、内瘻部と穿孔部は切除されました。1カ所の穿孔部はトリミングされ、短軸方向に縫合されました。直径5mm大の金属球3個と直径 2mm大の磁性のある四方形の金属が2個確認され、摘出されました。術後経過は順調で、13日目に後遺症なく退院しました。

 磁石と鉄球の誤飲による小腸穿孔例

磁石はもともと棒の四隅にとめてあり、互いに引っ付け合って遊ぶ玩具でした。しかし、使用中に劣化して棒から磁石が離れた状態になっていました。
男の子がいつ誤飲したかは不明で、母親の話では「道具箱を探って、口に入れたようだ」とのことでした。

類似傷害・事故

以前紹介したNo.57の事例が類似傷害・事故です。

この事故では、1歳5ヶ月の子どもが、円形のバンソウコウと磁石が一体となった健康商品の磁石を複数誤飲しました。最終的に、誤飲した磁石は病院で排泄されました。

複数の磁石を同時に誤飲してしまうと、腸管内の別々の場所に存在する磁石が腸管壁を間に挟んでくっつく場合があります。その結果、消化管穿孔や腸閉塞を起こした小児症例が国内外で多数報告されています。

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予防と対策方法

子どもの誤飲は、目撃があれば診断は容易です。しかし、今回のように磁石を誤飲して気づかないケースもあります。1995年から2005年までの10年間に医学誌に報告があった複数個の磁石誤飲では、13事例のうち誤飲の目撃があったのはわずかに2例だけでした。

また、1987年~2010年までに医学誌を含めた様々な媒体で報告された複数磁石の誤飲による消化管損傷事例では、20カ国と地域から計149例の事例がまとめられています。そのうち玩具の部品である磁石の誤飲は66例(43.1%)と約半数を占めました。玩具誤飲者は全例小児です(年齢幅:10ヶ月~13.5歳)。

日本では、一般社団法人日本玩具協会が定める玩具安全基準(ST基準)の中に、磁石を使った玩具の年齢制限、注意表記の規定、磁石の強さの規定が盛り込まれています。しかし、これはあくまで自主規格であり(ST基準に適合したおもちゃには STマークが表示可能)、国レベルの規制はありません。どのような玩具がどの程度流通しているのかといったデータも十分に把握されていません。消費者庁もホームページやメールマガジンを使って繰り返し啓発を行っていますが、事故は繰り返し起きています。そのため、根本的な玩具と磁石に関する規制が必要不可欠だと言えます。

ご家庭でできる対策は、子どもの遊ぶ玩具はあらかじめ収納容器を決めておく片づけ時などに個数を確認するといった習慣をつけるようにすることです。お子さんの誤飲にすぐに気づけるよう、玩具はしっかりと管理しましょう。

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出典:公益社団法人日本小児科学会「No.066 磁石と鉄球の誤飲による小腸穿孔例

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