【No.69】5歳の子どもがロフト(階段)から転落、意識回復せず!対策方法は?

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手術や事故の様子などショッキングな表現や画像が含まれる場合があります。

5歳4ヶ月の男の子がロフト(あるいは階段)から転落する事故が発生しました。
事故後1年9ヶ月経っても、男の子の意識は回復していません。日本ではロフトのある住居が多く、注意する必要があります。

本記事では、事故の原因や未然に防ぐための対策方法を日本小児科学会が公開した情報を元に紹介します。
同様の事故が起きないよう、それぞれのご家庭で対策方法を学びましょう。

事故発生の原因

2015年3月19日の午後8時、男の子(5歳4ヶ月)は、友人(小学校4年生)とロフトで遊んでいました。母親と兄(7歳)は、隣の部屋で布団を敷いていました。隣の部屋から「ドン」と大きな音が聞こえ、友人が「早く来て」と呼びに来ました。母親が見に行くと、男の子は右頬をおさえながら「痛いよ」と言って泣いていました。

男の子を発見した時、ハシゴは倒れていませんでした。友人も音で気が付いたため目撃者はおらず、状況から判断すると、ロフト階上もしくはハシゴから転落したものと考えられました。一時して男の子は泣き疲れて寝てしまったため、すぐには病院を受診しませんでした。12時間後の翌朝、男の子の意識が悪いことに母親が気づき、母親に連れられて自宅の車で医療機関を受診しました。

この男の子は、元来落ち着きのなさを指摘されていました。ロフトへの昇降は手すりのない急勾配なハシゴを利用していました。床からロフトまでの高さは2m70cm、ハシゴは9段あり、1段の高さが約40cmでした。ロフトは普段から男の子の遊び部屋として使用されていましたが、壁によりハシゴの装着部分以外からはロフトからは転落しない構造になっていました。また、ハシゴの昇降は普段から子どもたちだけでしていました。

病院の治療・手術

医療機関受診時、男の子の意識レベルはJapan Coma ScaleでIII-300(痛みや刺激に対し全く反応しない状態)、両側瞳孔は散大し対光反射は認められませんでした。頭部CT検査を施行したところ、右急性硬膜外血腫、右側頭骨骨折、脳ヘルニア、脳実質の虚血性変化を認めました。
脳神経外科による緊急開頭血腫除去術が施行され、術後集中治療管理を行いましたが、意識は回復しませんでした。

受傷後1年9ヶ月、脊髄反射レベルで四肢を動かしますが、依然として意識は変化していません。気管切開を行ったうえで、小児科病棟で人工呼吸器・経管栄養管理が継続されています。

なお、この事故について院内虐待対策チームでも検討が行われ、児童相談所への通告も行われました。自宅での遊ばせ方、受診まで時間がかかったことなどから、ネグレクトの可能性は指摘されましたが、身体的虐待の可能性は低いと判断されました。

予防と対策方法

ロフト(小屋裏収納)とは、本来は倉庫などを利用目的として屋根裏に作られた部屋を指します。しかし、日本の住宅では主に中二階に作られた空間を意味しています。
その設置基準は、建築基準法等により、ひとつの階として算入されないための床面積や高さの上限が定められています。また、ロフトへ昇降するための階段は建築地の特定行政庁ごとに基準が定められており、可動式や収納式のハシゴとし、固定階段は認めないとするもの(東京都豊島区)、固定式のものとしないとだけ記載されているもの(東京都新宿区)、固定階段の設置を認めるが階段の基準を規定するもの(東京都練馬区)など、認められるものが異なっています。
なお、階段については建築基準法施行令により、建物の用途に応じ階段1段の高さ(蹴上)、階段1段の面の幅(踏面)などの寸法の基準が定められています(住宅では蹴上 23cm以下、踏面15cm以上)。また、階段には手すりをつけることが定められていますが、手すりの高さなどの詳細は規定されていません。

イギリスの病院に頭部外傷のために入院した、あるいは頭部外傷の結果死亡した6歳未満の子どもたちを対象に行われた調査によると、屋根裏部屋からの墜落は少数ながら存在しており、頭部CT検査上の異常をきたす可能性が高まることが報告されています。

また、平成27年度の人口動態統計によると、不慮の事故による死亡の最も多い原因は不慮の窒息(9,356名)で、2番目に多い原因は転倒・転落(7,992名)と続き、これは交通事故(5,646名)よりも多いです。
家庭内での転倒・転落の理由は、スリップ・つまづきなど同一平面上での転倒が多く(1,469名)、階段などからの転落は2番目に多い(480名)理由でした。ただし、階段などからの転落で死亡した群の年齢は65歳以上が約80%(390名)と多くを占めています。なお、ロフトからの転落・墜落事故に関する詳細なデータはありませんでした。

限られた住居空間を有効に利用する必要がある日本では、今後もロフトは無くならないでしょう。そして、子どもがいる家庭かつロフトがある住居で暮らす家族は相当数いると考えられます。そのため、何らかの対策は必須です。
ご家庭でできる対策としては、ハシゴに手すりをつけ、かつすべての隙間をネット(網)などで覆いましょう。これにより、ハシゴから転落するリスクを下げることはできます。

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出典:公益社団法人日本小児科学会「No.069 ロフトあるいは階段からの落下による重症頭部外傷

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