【No.57】複数の磁石を1歳の子どもが誤飲する事故!対策方法は?

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手術や事故の様子などショッキングな表現や画像が含まれる場合があります。

1歳5ヶ月の子どもが、円形のバンソウコウと磁石が一体となった健康商品の磁石を複数誤飲する事故が発生しました。
最終的に病院で磁石は排泄され、子どもの健康に異常はありませんでした。

しかし、複数の磁石を同時に誤飲した乳幼児の体内で磁石同士が干渉し、腸閉塞などを引き起こす事例もあります。磁石の誤飲は深刻な問題となる危険な事故です。

本記事では、事故の原因や未然に防ぐための対策方法を日本小児科学会が公開した情報を元に紹介します。同様の事故が起きないよう、それぞれのご家庭で対策方法を学びましょう。

事故発生の原因

2015年5月9日の午後5時、男の子(1歳5ヶ月)と母親は外出先から家に戻り、男の子は買ったばかりの円形のバンソウコウと磁石が一体となった健康商品の袋を持って遊んでいました。

その後、母親は男の子をベビーカーに残した状態で家にあがり玄関を掃除しました。数分後、製品の袋に穴が開き、バンソウコウから磁石がはがされ、磁石のみが6個無くなっているのに母親が気付きました。複数の磁石を誤飲した可能性が考えられたため、母親は救急車を呼びました。

病院の治療・手術

受診時、男の子のバイタルサインは安定していました。機嫌も良好で、嘔吐や腹痛などの消化器症状もありませんでした。また、咳き込みなどの気道異物を疑う所見もありませんでした。

腹部X線検査にて、上部小腸に6個連なった磁石を確認しました。腹部症状がなく、すでに磁石が胃を越えた腸管内にあることから外科医と相談し、経過観察となりました。

翌日の再診時、バイタルサインの悪化や腹部症状の出現はなく、腹部X線検査では前日と比較して磁石が肛門側へ進んでいることが確認できました。同日午後、磁石6個が便とともに排出されました。誤飲日より3日後、再度検査をしますが異物の残存はなく、終診となりました。

類似傷害・事故

2018年8月のある日の午前10時頃、磁石が8個繋がったもので男の子(1歳1ヶ月)は遊んでいました。母親が洗濯物を外で干していると、男の子が磁石を口に含んで遊んでいると姉(4歳)が報告しに来ました。母親は男の子の元へ駆けつけますが、男の子は磁石を飲み込んでしまいました。
特に変わった様子がなく自宅で様子を見ていましたが、午後8時に父親が帰宅し、病院を受診した方が良いという判断となり、病院へと向かいました。

来院時、男の子の全身状態は良好でした。腹部X線写真を撮影すると、骨盤腔内の右寄り消化管内に異物を認目ました。小児外科・消化器内科と相談し、内視鏡による摘出は困難と判断されました。肛門からの自然排泄を期待し、有事の際は緊急対応する方針で経過観察入院としました。入院3日目、異物の排泄を確認し、翌日まで血便等がない事を確認して帰宅となりました。

予防と対策方法

今回の事故は、生後半年から2~3歳頃に好発する異物誤飲の事例です。今回の事例で誤飲された製品は、永久磁石をバンソウコウに接着させたものであり、健康商品として昔から人気があります。国内に広く流通しており、子どもたちが家庭内で容易に入手できるものです。
本製品を製造する企業のホームページでは、特に乳幼児や高齢者を対象に誤飲に対する注意喚起がなされており、その背景に誤飲した事案が発生しているものと思われます。

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複数の磁石を同時に誤飲すると、腸管内の別々の場所に存在する磁石が腸管壁を間に挟んで接着されてしまい、固定してしまうことがあります。その結果、消化管穿孔や腸閉塞を起こした小児症例が国内外で多数報告されています。
アメリカ疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention)からの報告では、おもちゃの一部として使用されている磁石を子どもが誤飲した事例があり、製品のリコールもありました。

本製品はバンソウコウから磁石を取り外すことが容易にできます。バンソウコウで接着されたままで複数個を誤飲することは困難であるため、容易に外せない構造にすることで複数個の誤飲を防ぐことができる可能性はあります。
ご家庭でできる対策としては、乳幼児の生活環境にこのような製品を置かないようにするしかありません。もし磁石を誤飲してしまった場合は、すぐに病院へ行きましょう。磁石の誤飲は深刻な問題となる場合があります。

出典:公益社団法人日本小児科学会「No.057 複数個の磁石の誤飲.pdf

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