【No.47】木製おもちゃを誤嚥した2歳の子どもが心肺停止!対策方法は?

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手術や事故の様子などショッキングな表現や画像が含まれる場合があります。

2歳の女の子が、苺を模した木製の玩具を飲み込んで窒息する事故が発生しました。
最終的に女の子は限りなく脳死に近い状態となりました。

乳幼児が身近なものを口に入れて誤嚥・誤飲する事故は、どのご家庭でも起こる可能性がある事故です。それぞれのご家庭で対策方法を学び、万が一に備える必要があります

本記事では、事故の原因や未然に防ぐための対策方法を日本小児科学会が公開した情報を元に紹介します。同様の事故が起きないように対策を学んでください。

事故発生の原因

2013年6月23日の午後5時45分、女の子(2歳)は双子の妹・母親・兄(6歳)と一緒に夕食を食べていました。

女の子は先に食事を終え、苺を模した木製の玩具(中心部の直径:3.5cm)の先端部分をふざけて口の中に入れ、母親に見せにきました。
女の子の発達には異常はありませんでしたが、以前より口の中に異物を入れて遊ぶ癖がありました。

誤嚥した苺を模した木製の玩具

母親はすぐに口から出すように注意しましたが、この日はいつになく厳しい口調で叱ったため、女の子はムキになって口を閉じて誤嚥に至りました。

母親はすぐに背部叩打法を行いましたが、木製の玩具は出てきませんでした。
母親が119番通報を行い、救急隊が駆けつけました。救急搬送中、女の子は心肺停止となり、胸骨圧迫のみ施行されながら搬送されました。

病院の治療・手術

異物の誤嚥から約18分後、救急車は病院に到着しました。さらに病院到着から11分後、医療処置により心拍が再開しました。しかし、異物が見つからず虐待の可能性も考えられました。

入院から72時間後、頭部MRIにより上咽頭に異物が見つかりました。異物の摘出を依頼された耳鼻咽喉科は異物を摘出しました。女の子はMRIの拡散強調画像でびまん性の高信号領域を認め、重度の低酸素性脳症と考えられました。

鎮静終了後も自発呼吸が戻らず、入院13日目の脳波では聴性脳幹反応が消失していました。臨床的には脳死に限りなく近い状態で入院から180日が経過していました。

なお、この事故による直接医療費は、11,521,070円(入院時から2013年12月末日まで)だったとのことです。

類似傷害・事故

スーパーボールで窒息死した類似事故のケースもあります。No.3のレポートをご覧ください。

この事故では、3歳の子どもが口の中にスーパーボールを2つ入れて遊んでたところを母親に注意され、驚いて2つのスーパーボールのうち1つを吸い込んで窒息します。

母親は救急隊を要請し救命救急センターでスーパーボールが摘出されました。しかし、蘇生開始後20分で心拍は再開しますが、自発呼吸はありませんでした。

その後、病院で継続して処置が行われますが意識の回復はみられず、自発呼吸が無いため人工呼吸管理を継続しました。
6ヶ月後、3歳の子どもは死亡しました。

誤飲したスーパーボール

予防と対策方法

日本小児科学会によると、3才前後の幼児の最大開口口径は39mm(大きく口を開いた時のサイズ)です。このサイズ以下の製品は簡単に幼児の口の中に入り、それが咽頭や喉頭部に陥入して窒息が発生します。

今回の事故に至った玩具は、2つのパーツがマジックテープでくっついた苺を模した木製の玩具でした。このパーツの分離は簡単にでき、1つのパーツのサイズは39mm以内でした。苺を模した玩具を幼児が口に入れることは十分に予想できます。

また、今回の事故では窒息は疑われていましたが気管挿管時に直視下に異物が確認されなかったため、急性期に単純レントゲン写真以上の検索は行われませんでした。異物がレントゲンを透過する木製であったことも原因の一つと言えるでしょう。

最終的には4日目に脳の状態を評価する目的で撮影された頭部MRIで異物が発見されました。特殊な異物が上咽頭に陥入すれば、大きくても存在に気づかれないことがありえることは知っておきましょう。

ご家庭でできる対策は、子どもの身の周りにある小さなの製品は誤嚥や窒息の危険性があるため、子どもの周辺から除外することです。

もし子どもに窒息の可能性がある場合は、以下の処置を行いましょう。

「あめ玉」などを飲み込んで窒息の可能性がある場合の対処方法
出典:窒息 | こどもの救急
1歳未満の乳児の場合

意識がある場合:「胸部突き上げ法」と「背部叩打法」を数回ずつ交互に行います。
意識がない場合:心肺蘇生(CPR)を行いながら119番通報し、救急車を呼びます。

1歳以上の幼児の場合

意識がある場合:「腹部突き上げ法」を行います。
意識がない場合:心肺蘇生(CPR)を行いながら119番通報し、救急車を呼びます。

また、乳幼児向けの玩具に関しては、対象年齢に合わせたサイズを考慮した製品開発が必要です。加えて、誤飲や誤嚥をする可能性がある製品の表面に苦み成分を含んだものを塗布するなど、誤飲や窒息を想定した製品を開発する必要があると言えます。
さらに、誤嚥したとしても完全に気道を閉塞しないよう、製品の一部に通気用の穴を開けるなども考慮すべきだと言えるでしょう。

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出典:公益社団法人日本小児科学会「No.047 木製おもちゃの誤嚥による窒息

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