【No.18】母親の洗髪中、浴槽で浮輪に座っていた0歳の赤ちゃんが溺水!対策方法は?

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手術や事故の様子などショッキングな表現や画像が含まれる場合があります。

0歳(生後7ヶ月)の男の子が、母親の洗髪中に溺水できすいする事故が発生しました。
男の子は浴槽内で座面つきの浮き輪に座っていましたが、バランスを崩して溺水しました。

最終的に男の子は退院しましたが、溺死できしの可能性もあった危険な事故です。

本記事では、事故の原因や未然に防ぐための対策方法を日本小児科学会が公開した情報を元に紹介します。同様の事故が起きないように対策を学んでください。
また、お子さんが溺水した場合の対処方法も紹介しますので、万が一に備えて実践できるようにしておきましょう。

事故発生の原因

2009年3月15日の午後9時15分ごろ、男の子(生後7ヶ月)と母親は入浴をしていました。
母親は男の子を浴槽内で座面つきの浮き輪に座らせ、洗髪のため2~3分間目を離しました。

再び母親が子どもを見ると、男の子は浴槽内でうつ伏せになって浮かんでいました。男の子を直ちに抱き上げますがぐったりとして泣かず、顔面は蒼白でした。

21時23分、母親は救急車を要請します。
救急隊による電話の指示で心肺蘇生を開始します。男の子は泣き出す反応を見せましたが、目を閉じた状態で体には力が入っていました。

病院の治療・手術

午後9時54分、病院へ到着しました。
男の子の目を閉じた状態で唸っていました。眼瞼まぶた点状出血斑てんじょうしゅっけつはんがみられましたが、外傷痕はありませんでした。男の子の体重は9.0kg、体温は36.0℃、脈拍は120/分、呼吸数は40/分、血圧は100/55でした。

来院時に強直性痙攣きょうちょくせいけいれんが出現し、ジアゼパムの静注でいったん収まりました。
入院してマンニトール、ミダゾラム、抗菌薬の投与を行ったが痙攣が遷延せんえんし、意識レベルもJCS-200から回復せず、脳低温療法の適応が考えられたため、入院2時間後に大学病院へ転院となりました。

転院後、低酸素性脳症による意識障害と考え軽度低体温療法が行われました。
入院4日目、頭部CTに脳浮腫はなく、7日目に復温を完了しました。リハビリを行い、食事摂取、座位、つかまり立ちまで可能となりました。脳波は正常睡眠徐波、頭部MRIでわずかな萎縮性変化を認めました。

4月15日(事故から1ヶ月後)、自宅への退院となりました。

類似傷害・事故

2009年10月14日の午後6時15分ごろ、女の子(0歳10ヶ月)と母親は入浴をしていました。
女の子は浴槽内で座面つきの浮き輪に座っていましたが、母親が3~4分間目を離したスキに浴槽の底に沈んでいました。母親は女の子を引き上げて刺激したところ、2回嘔吐し、徐々に呼吸を再開しました。

午後7時10分に救急車で病院へ到着します。
女の子の意識は清明で声をあげて泣いていましたが、経過観察を目的に入院となりました。血液検査、胸部X線写真、頭部CTにも異常はなく、胸部超音波にて軽度の肺動脈弁狭窄はいどうみゃくべんきょうさく卵円孔開存らんえんこうかいぞんが認められました。マンニトール、抗菌薬を投与して経過を観察しました。

入院後、発熱、痙攣、呼吸障害はなく、溺水の合併症もなかったため、10月16日に退院となりました。

入浴時の溺水事故は全国でも多数起きています。こちらの記事もご覧ください。

予防と対策方法

溺水事故では、毎年300人前後の子どもが亡くなっています。
特に1歳前後の乳幼児は、浴槽で溺水する割合が多いです。浴槽での溺水事故は、母親の洗髪や着替えを取りに行くなどの目を離したスキに起きています。短い時間でも、乳幼児を浴室に1人にするのは絶対に止めましょう

また、便利な育児グッズとして浴槽用のベビー浮輪が販売されていますが、入浴中にベビー浮輪は使わないでください。乳幼児の重心は頭の高い位置にあり、頭を前後するだけで容易に転倒する可能性があります。そして、一度転倒すると元の位置へ戻れず、溺水となる可能性が高いです。
実際、溺死例も多数報告されています。非常に危険性の高い商品であり、そもそも使わないことが正解です。

そして、以下の4つに注意して徹底するようにしてください。

子どもの溺水を防止する方法
出典:溺水 | こどもの救急

子どもを浴室に近づけないベビーゲートも有効です。

また、もし子どもが溺水してしまったら、以下の対応をしてください。

  • 大きな声で呼びかけて反応をみます。
    反応と呼吸がなければ、直ちに胸骨圧迫と口対口(マウス・トゥ・マウス)の人工呼吸を開始します。
  • 同時に応援を呼んで119番通報し、救急車を呼びましょう。
    誰もいない場合、まず胸骨圧迫人工呼吸を2分間行ってから119番へ連絡します。

この時、無理に水を吐かせるよりも胸骨圧迫が重要です。そして、子どもが意識を取り戻して泣くようであれば一安心です。
ただし、顔色が悪かったり呼吸に異常がある場合は、すぐに病院を受診してください。

出典:公益社団法人日本小児科学会「No.018 解決したはずの浴槽用浮き輪による溺水(2009年3月、10月の2例)(事例1)」「No.018 解決したはずの浴槽用浮き輪による溺水(2009年3月、10月の2例)(事例2)

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