【No.4】母親の洗髪中、浴槽用ベビー浮輪に座っていた0歳の赤ちゃんが溺水!対策方法は?

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手術や事故の様子などショッキングな表現や画像が含まれる場合があります。

0歳(生後9ヶ月)の男の子が、母親の洗髪中に溺水できすいする事故が発生しました。
男の子は浴槽内で、浴槽用のベビー浮輪に座って浮かんでいましたが、バランスを崩して溺水しました。

最終的に男の子は後遺症もなく無事に退院しましたが、あわや溺死できしの可能性もあった事故です。

本記事では、事故の原因や未然に防ぐための対策方法を日本小児科学会が公開した情報を元に紹介します。同様の事故が起きないように対策を学んでください。
また、お子さんが溺水した場合の対処方法も紹介しますので、万が一に備えて実践できるようにしておきましょう。

事故発生の原因

11月21日、母親が洗髪中、0歳の男の子(生後9ヶ月)は浴槽用のベビー浮輪に座らされ、足はついていない状態で浴槽内に浮かんでいました。

洗髪中の母親は男の子の声が聞こえないのに気づき(長くて3~4分)、浴槽を確認したところ、男の子は浮き輪から外れてうつ伏せの状態で浮かんでいました。

母親はすぐに男の子を浴槽より引き上げました。男の子は息をしておらず、顔色不良も見られたため人工呼吸を開始します。1~2分で男の子の呼吸は再開し、ミルクの嘔吐もありました。

その後、救急車で近くの病院へ搬送され、加療のため入院となりました。

病院の治療・手術

来院時、0歳の男の子(生後9ヶ月)の呼吸はやや不規則で、100%酸素投与でSpO2は100%でした。意識はやや混濁していましたが、循環は安定していました。
集中治療室での管理にて、呼吸は数時間で安定し、抗痙攣薬こうけいれんやくと浸透圧利尿薬を投与しました。

翌日、男の子の意識は清明となり、哺乳も普段どおりできるようになりました。頭部CTでも異常はなく脳波所見も正常範囲内でした。

事故発生から6日後、男の子は麻痺や失調などもないため退院となります
以後、外来での経過観察に問題はなく、翌年3月9日(1歳1ヶ月)には伝い歩きができ、単語は「わんわん」「おっぱい」などが言えており、後遺症のない可能性が高いという状況です。

類似傷害・事故

同様の類似事故は、日本全国で頻繁に起きています。
日本小児科学会のレポートにまとめられている3件の類似事故を簡単に紹介します。

類似事故(浴槽用のベビー浮輪)

2018年9月、0歳の男の子(生後9ヶ月)は自宅の浴槽(水深50cmくらい)にて浴槽用のベビー浮輪をつけて遊んでいました。
男の子はバランスを崩して回転し、そばで見ていた母親は2秒くらいで引き上げます。その直後から咳き込みが激しかったため母親が家庭用吸引器を使い鼻吸引をします。
呼吸停止や意識消失はありませんでしたが念の為に病院を受診します。

来院時、男の子の意識は清明であり咳や変わった呼吸はみられず、聴診所見にも異常はありませんでした。
翌日に病院が電話で確認すると、男の子は夜間の咳き込みもなく、朝起きてからも普段と変わりない様子だったとのことです。

類似事故(浴槽用のベビー浮輪)

2014年11月、母親が洗髪中、0歳の女の子(生後9ヶ月)は浴槽用のベビー浮輪に座らされ足が着かない状態で浮いていました。
女の子はバランスを崩してひっくり返り、母親はすぐに気が付いて5秒以内で助けます。女の子はすぐに泣き、咳き込みやむせるような感じはありませんでした。母親は念の為、病院を受診します。

来院時、女の子のバイタルサインに異常は見られず、肺野部はいやぶの聴診上も問題はありませんでした。救急外来の診療のみで帰宅しました。

母親によると、パンツ型の浮き輪は友人から便利だと借りていたものでした。友人は子どもが7ヶ月から2ヶ月間使用していたとのことです。ちなみに、パンツ型の浮き輪には「足が着くところでは使用しないこと」と注意書きがありました。

類似事故(浴槽用ではない浮輪)

2013年1月、母親は0歳の男の子(生後8ヶ月)を自宅のお風呂にて、いつも使用している浮き輪(浴槽用ではない)を使って入浴させていました。
その後、母親は着替えを取りに1〜2分間ほど目を離します。浴室に戻ると、浮き輪の中に男の子はいませんでした。浮き輪はひっくり返ってはいなく、男の子だけが沈んでいました。

母親は男の子をすぐに浴槽からすくい上げ、同居している祖母に助けを呼びます。全身チアノーゼで呼吸をしていなかったため、祖母が救急要請を母親に指示しながら、人工呼吸を20回程したところ、男の子は少量の水を嘔吐します。
それでも反応がないため、祖母は胸骨圧迫を20回程します。徐々に反応が見られるようになり、救急隊が到着した際には、男の子は声をあげて泣いており、酸素投与されながら救急搬送されました。

入院後、病院の検査では以上は見られず、5日後に退院しました。

ベビー浮輪の事故

なお、この時の直接医療費は387,380円でした。

予防と対策方法

浴槽用のベビー浮輪は、浴槽内でスベるなどの危険性を減らすために開発された乳幼児用商品です。
この浮輪は座ることを前提に設計されていますが、乳幼児の重心は頭の高い位置にあるため、乳幼児が頭を前後するだけで容易に転倒する可能性があります。そして、一度転倒すると乳幼児は元の位置へ戻れず溺水となる可能性が高く、溺死例も報告されています。

溺水の事故では、毎年300人前後の子どもが亡くなっています。特に1歳前後の乳幼児は、浴槽で溺水する割合が多いです。
家庭での溺水は、母親の洗髪中や着替えを取りに行くなどの目を離したスキに起きています。短い時間でも、乳幼児を浴室に1人にするのは絶対に止めましょう

一般家庭で実践できる対策は、浴槽用のベビー浮輪を使わないことです。
実際、保護者が近くにいるにも関わらず転倒は起きています。非常に危険性の高い商品であり、そもそも使わないことが正解です。

そして、以下の4つに注意して徹底するようにしてください。

子どもの溺水を防止する方法
出典:溺水 | こどもの救急

子どもを浴室に近づけないベビーゲートも有効です。

また、もしお子さんが溺水してしまったら、以下の対応をしてください。

  • 大きな声で呼びかけて反応をみます。
    反応と呼吸がなければ、直ちに胸骨圧迫と口対口の人工呼吸を開始します。
  • 同時に応援を呼んで119番通報し、救急車を呼びましょう。
    誰もいない場合、まず胸骨圧迫人工呼吸を2分間行ってから119番へ連絡します。

この時、無理に水を吐かせるよりも胸骨圧迫が重要です。そして、お子さんが意識を取り戻して泣くようであれば一安心です。
ただし、顔色が悪かったり、呼吸に異常がある場合は、すぐに病院を受診してください。

出典:公益社団法人日本小児科学会「No.004 浴槽用浮き輪による溺水

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