母親が洗髪中、浴槽で首浮き輪を付けた女の子(0歳6ヶ月)が溺水する事故が発生しました。女の子はすぐに病院へ搬送され、後遺症もなく退院しました。
赤ちゃんに首浮き輪・浮き輪をつけて浴槽に入れ、目を離したスキに溺水する事故はよく起きています。
本記事では、事故の原因や未然に防ぐための対策方法を日本小児科学会が公開した情報を元に紹介します。同様の事故が起きないように対策を学んでください。
目次
事故発生の原因
2012年2月1日の午後6時20分ごろ、母親と女の子(0歳6ヶ月)は入浴をしていました。
母親は女の子に首浮き輪を付け、浴槽に入れました(2つある安全ベルトのうち、上の安全ベルトしかしていませんでした)。
母親が洗髪をはじめ、目を離した2~3分間に首浮き輪がズレ落ち、女の子は鼻の下までお湯に浸りました。それに気が付いた母親はすぐに女の子を抱き上げました。
女の子は顔色は悪く、2回水を嘔吐しました。母親は救急車を呼びました。
病院の治療・手術
来院時、女の子の意識は清明、呼吸・循環は安定し、神経学的に異常所見はありませんでした。
溺水していたため、入院して経過観察となりました。
3日間の入院で呼吸状態の悪化なく、後遺症なく退院しました。
なお、直接医療費(入院費)は197,350円だったとのことです。
類似傷害・事故
2012年3月28日にも同じような事故が起きています。
母親は男の子(0歳4ヶ月)に首浮き輪をつけて浴槽に入れました。そして、母親が洗髪中に男の子の浮き輪は外れて溺水しました。浴槽には、嘔吐、便、浮き輪が浮かんでおり、気が付いた母親はすぐに男の子を抱え上げました。
男の子は全身が白色となっており、口唇は紫色でした。母親は頬や身体を叩いたり、喉に指を入れたりし、約1分程度でケホッと咳をして泣き出しました。
救急車で病院へ搬送され、検査後に経過観察として入院しました。
翌日、男の子は無事に退院しました。
浴槽で浮き輪を使用して赤ちゃんが溺水する事故も起きています。
詳しくはこちらをご覧ください。
予防と対策方法
「首浮き輪」は、2009年に販売を開始したベビーグッズです。生後1ヶ月から体験できるスポーツ知育のひとつ「ベビープレイスイミング」の実践ツールとしてイギリスで開発されました。
首を固定するため、水中で赤ちゃんがひっくり返る心配がなくなります。ただし、注意書きには浅い水深では使用しないこと、首浮き輪を着用中は赤ちゃんから目を離さず、保護者が必ず付き添って使用することと書かれています。
今回の事故は、まず首浮き輪の2つの安全ベルトを閉めていなかったことが問題です。結果、ベルトは何らかの理由でズレ落ち、赤ちゃんは溺水しました。
また、そもそも首浮き輪は入浴に用いるものではなく、プレスイミングを体験するためのベビーグッズです。保護者が子どもから目を離すことは考慮されていません。
溺水事故では、毎年300人前後の子どもが亡くなっています。
特に1歳前後の乳幼児は、浴槽で溺水する割合が多いです。浴槽での溺水事故は、母親の洗髪や着替えを取りに行くなどの目を離したスキに起きています。短い時間でも、乳幼児を浴室に1人にする(目を離す)のは絶対に止めましょう。
そして、以下の4つに注意して徹底するようにしてください。
お子さんが小さなうちは、浴室に近づけないようにベビーゲートを設置するのも有効です。
また、もし子どもが溺水してしまったら、以下の対応をしてください。
- 大きな声で呼びかけて反応をみます。
反応と呼吸がなければ、直ちに胸骨圧迫と口対口(マウス・トゥ・マウス)の人工呼吸を開始します。 - 同時に応援を呼んで119番通報し、救急車を呼びましょう。
誰もいない場合、まず胸骨圧迫と人工呼吸を2分間行ってから119番へ連絡します。
この時、無理に水を吐かせるよりも胸骨圧迫が重要です。そして、子どもが意識を取り戻して泣くようであれば一安心です。
ただし、顔色が悪かったり呼吸に異常がある場合は、すぐに病院を受診してください。
出典:公益社団法人日本小児科学会「No.032 首浮き輪による溺水(事例1)」「No.032 首浮き輪による溺水(事例2)」