0歳4ヶ月の女の子が、セラミックファンヒーターの温風でやけどする事故が発生しました。
最終的に女の子は無事でしたが、人感センサーを搭載したヒーターの使用には注意が必要です。
本記事では、事故の原因や未然に防ぐための対策方法を日本小児科学会が公開した情報を元に紹介します。
同様の事故が起きないよう、それぞれのご家庭で対策方法を学びましょう。
目次
事故発生の原因
2016年1月28日の午後8時30分、女の子(0歳4ヶ月)はリビングに敷いた布団で寝ており、母親と兄(2歳)は入浴のためリビングを出ました。
女の子の約2m先にはヒーターがありました。ヒーターは入浴直前まで600Wで使用されており、入浴に合わせて電源を切ったもののコンセントは接続したままでした。
21時過ぎ、入浴後に母親がリビングに行くと女の子がヒーターの前におり、温風が出ていました。
女の子は泣いており、左顔面が赤くなっていました。
母親は冷却したタオルや保冷剤で30分ほど冷やし、救急外来を受診しました。
病院の治療・手術
病院にて、左頭頂部の水疱形成しⅡ度熱傷(1%)、左頬部Ⅰ度熱傷(1%)、左耳介Ⅰ度熱傷(1%未満)のやけどと診断されました。
翌日の再診でも同様の所見でした。
4日後と11日後にフォローアップを行い、無事に回復に向かったとのことでフォローは終了しました。
Ⅰ度 | Ⅱ度 | Ⅲ度 | |
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損傷レベル | 表皮より浅い | 表皮、真皮 | 皮膚全層・皮下組織 |
症状(外見) | 赤み(充血、発赤) | 水疱(水ぶくれ) | 乾燥(黒色、白色) |
症状(自覚) | 痛み、熱感(熱い) | 痛み(損傷レベルが深くなるにつれて痛みが減少) | 無痛、感覚なし |
治癒期間 | 数日 | 1~4週間 | 1ヶ月以上 |
傷跡 | 残らない | 残る場合と残らない場合がある | 残る |
今回の事故の原因となったヒーターには、人感センサー(本体前面の左上部、送風口は下部)が搭載されていました。
センサーが感知する範囲は、上下方向が60度、左右が90度だったため、センサーが女の子の動きを感知して起動した思われます。母親はヒーターの説明書を読んだことがなかったとのことです。
予防と対策方法
救急外来を受診した子どものやけど患者の約6割が、0歳児および1歳児です。
その原因の多くは加熱された液体によるやけどですが、4%程度はストーブやファンヒーターによるものです。
ヒーターの温風が原因となる「非接触性熱傷」の特徴は、熱源から離れているにも関わらず、深達性熱傷ができることです。
これはファンヒーターなどの近くで入眠してしまうことで、比較的低い温度に長時間暴露されることが原因となっています。
国民生活センターが行った調査によると、床に設置し温風が吹き出すタイプのヒーターは、吹き出し口の温度が最低でも70℃近くになっており、吹き出し口から50cm離れたところで40~73℃、1m離れたところで 31~54℃になっているとのことです。
また、熱源に接触させる動物実験でのやけどに至る温度と時間の関係は、50℃では5~6分、60℃では5秒程度、70℃以上では1秒もあれば十分でした。なお、8時間近く接触してもやけどにならない温度は43℃以下でした。
今回の事故のヒーターには、人感センサーが搭載されていました。また、対象が長時間動かないあるいは動きが小さいと自動的に運転停止する機能もありました。加えて、子どもが触ることによる誤作動を防ぐ為、動作ボタンにチャイルドロック機能が装備されており、安全面に配慮された製品ではありました。
しかし、事故は起きました。
メーカーは床面を移動する乳児にセンサーが作動しないよう、感知幅を狭めることを検討し、その結果を反映させた基準作りが必要であると言えます。
乳児期前半の子どもがいるご家庭ではヒーターを使用する場合は人感センサーをオフにするだけではなく、その場から離れる場合は本体の電源もオフにしてください。
出典:公益社団法人日本小児科学会「No.062 人感センサー付セラミックファンヒーターによる熱傷.pdf」