2歳の男の子が、ブドウを誤嚥して窒息する事故が発生しました。
最終的に男の子は後遺症なく退院しましたが、ブドウによる窒息で乳幼児が死亡しているケースもあります。
乳幼児が身近なものを口に入れて誤嚥・誤飲する事故は、どのご家庭でも起こる可能性がある事故です。それぞれのご家庭で対策方法を学び、万が一に備える必要があります。
本記事では、事故の原因や未然に防ぐための対策方法を日本小児科学会が公開した情報を元に紹介します。同様の事故が起きないように対策を学んでください。
目次
事故発生の原因
2013年8月11日の午後6時40分、男の子(2歳6ヶ月)は母親と食卓でブドウ(直径3cm大、皮をむいた種なし、今回がはじめて)まるごと1個を食べました。
食べた直後は異常がありませんでしたが、男の子は突然咳き込んだ後に泡を吹いて意識を失いました。そばにいた母親は誤嚥を疑ってブドウを取り出そうとしますができず、救急車を呼びました。
母親は男の子を抱いて家の外で救急車を待っていた際、事情を聞いた通行人が男の子にハイムリッヒ法(※1)を実行します。男の子はブドウを一塊で吐き出し、意識を取り戻して泣き始めました。意識を失って約5分の奇跡的な瞬間でした。
後日判明したことですが、この通行人は数週間前にBLS(※2)を受講したばかりでした。
病院の治療・手術
救急車の到着後、男の子は病院へと搬送されました。
病院到着時、男の子の意識清明でしたが、胸部X線単純写真では両肺野のすりガラス状の透過性低下を認めたため、経過観察を目的に入院となりました。
入院4日目、胸部X線単純写真で透過性低下の改善傾向を確認し、6日目に退院しました。後遺症もありません。
なお、この事故による直接医療費は436,880円だったとのことです。
類似傷害・事故
ブドウの誤嚥による窒息で死亡するケースもあります。
2013年10月6日の午後7時40分、男の子(1歳6ヶ月)はこれまでブドウを食べたことはなく、父親が「食べるか」と聞いたら頷いたため、父親はブドウの皮を剝き、丸ごと1個を男の子の目の前の皿に置きました。
男の子は父親の目の前で、自分でブドウを手に取って口に入れました。その直後、顔面蒼白・口唇チアノーゼをきたしました。父親が背部を強打するも顔色に変化がなく、救急車を呼びました。
午後7時46分、救急隊が現場に到着し、心肺停止と判断、CPRを開始しました。口腔内吸引でブドウの一部が吸引されました。午後8時8分、病院へ到着します。病院で各種処置が実施され、午後8時27分に心拍が再開します。その後、ICU入院となります。しかし、各種治療も虚しく脳死とされうる状態になり、約3ヶ月後に死亡しました。
予防と対策方法
食品安全委員会によると、窒息を引き起こす果実類として、ミニトマト、リンゴ片、ブドウなどが挙げられています。また、消防庁や救命救急センターからの報告では、食品による窒息死の7~10%が果実との報告があります。
年齢階層別の死亡総数に占める「気道閉塞を生じた食物の誤嚥」による死亡数の比率をみると、全人口の平均は 0.4%ですが、0歳(0.6%)、1歳(1.1%)、2歳(2.2%)、3歳(1.0%)、4歳(1.7%)、5~9歳(0.3%)となっており、5歳未満のリスクが高いことが分かります。これは、乳幼児は歯で噛み切る、臼歯ですりつぶす機能が未熟であることが大きな要因と思われます。
また、一口サイズを吸い込んで食べる行為が危険です。日本小児科学会は、5歳未満の小児がブドウやミニトマトなどを食べる際は、1/4以下の大きさに切って与える必要があると、乳幼児健診などで伝えるべきと述べています。
もし子どもに窒息の可能性がある場合は、以下の処置を行いましょう。
意識がある場合:「胸部突き上げ法」と「背部叩打法」を数回ずつ交互に行います。
意識がない場合:心肺蘇生(CPR)を行いながら119番通報し、救急車を呼びます。
意識がある場合:「腹部突き上げ法」を行います。
意識がない場合:心肺蘇生(CPR)を行いながら119番通報し、救急車を呼びます。
出典:公益社団法人日本小児科学会「No.049 ブドウの誤嚥による窒息(事例1).pdf」