女の子(1歳9ヶ月)が水道の蛇口から直接水を飲もうとした際、蛇口に歯がはまって取れる事故が発生しました。事故が起きた水道の蛇口は、一般的に使用されているメジャーなものです。
母親はすぐに病院へ行きますが、女の子の乳歯は元に戻せませんでした。
本記事では、事故の原因や未然に防ぐための対策方法を日本小児科学会が公開した情報を元に紹介します。同様の事故が起きないように対策を学んでください。
目次
事故発生の原因
2011年3月17日の午後10時ごろ、女の子(1歳9ヶ月)は母親と入浴中に水道の蛇口から直接水を飲もうとした際、蛇口から顔が離れなくなりました。
母親が女の子の体を引き離したところ、左下の乳臼歯が蛇口側にくっついたまま脱落しました。
※乳臼歯とは、乳歯の中で一番最後に生えてくる歯です。食べ物をかみ砕く役割があり、運動能力、発音、顎の発達を担う役目もあります。
母親はすぐに乳臼歯を牛乳に浸して、近くの歯科医院を受診しました。
しかし、女の子が落ち着いて処置を受けることができず、処置困難と判断され帰宅しました。
抜けた歯をもう一度戻すことができるかどうかは、抜けてからの時間と歯の周囲についている歯根膜という膜をどれだけ正常な状態で残すことができるかにかかっています。牛乳は体液に浸透圧が近く、膜を破壊することなく乾燥を防ぐことができます。つまり、牛乳は最も容易に手に入る清潔な細胞保存液です。もしお子さんの歯が抜けてしまった場合、歯を牛乳に浸して早めに病院へ行きましょう。
病院の治療・手術
翌朝の午前10時ごろ、別の病院を受診しました。
抜けた乳臼歯は完全脱臼しており、12時間以上経過していることから再植できないと判断されました。その他は異常ありませんでした。
感染防止のために洗浄と投薬を行い、経過観察となりました。
予防と対策方法
日本小児科学会によると、乳歯の外傷は上の前歯に最も起きやすく、原因のほとんどが転倒、転落、衝突によるものです。
今回のような乳臼歯の完全脱臼は稀な事故とのことです。
事故後の調査では、蛇口は内部に蛇腹構造があり、蛇口の外径は約15mm、内径は6mm、管の幅は約1mmで、蛇腹部分はわずかに可動性があることが分かりました。
蛇口の構造と歯が抜けたメカニズムは以下の図の通りです。
つまり、同様の事故が起きることはあり得ます。
乳幼児は小さいため、高いところにある台所や洗面所の蛇口に口をつけることはできません。しかし、浴室の蛇口は口をつけて飲むことができるため、注意が必要です。
今回の事故を踏まえると、蛇口に口をつけて水を飲む行為は禁止にするのがベストです。基本的にはコップを使って飲むことを徹底しましょう。もしコップがない場合は、蛇口から出る水を器にした手で受け止め、手に口をつけて水を飲むようにしましょう。
もちろん、今回の事故を受けて蛇口の構造を変える必要はあると言えます。しかし、この一般化した蛇口が全て変更されることは望めないため、蛇口に口をつけて水を飲む行為そのものをやめましょう。
出典:公益社団法人日本小児科学会「No.030 蛇口による乳臼歯脱臼」