3歳の子どもがスーパーボールを誤飲して、窒息死する事故が発生しました。
スーパーボールに限らず、乳幼児による小さなボールの誤飲事故は、どのご家庭でも起こり得る事故です。それぞれのご家庭で対策方法を学び、万が一に備える必要があります。
本記事では、事故の原因や未然に防ぐための対策方法を日本小児科学会が公開した情報を元に紹介します。同様の事故が起きないように対策を学んでください。
目次
事故発生の原因
とある日の午後6時17分、3歳の子どもは口の中にスーパーボール(直径3.5cm)を2つ入れて遊んでいました。
たまたま気づいた母親は「危ないのでボールを口から出しなさい」と叱ったところ、驚いて2つのスーパーボールのうち1つを吸い込んでしまい、窒息状態となります。
母親は3歳の子どもの口の中に指を入れて取り出そうとしますが、スーパーボールは取り出せません。
母親は救急隊を要請し、午後6時54分(窒息から37分後)、3歳の子どもは喉頭にスーパーボールが詰まった状態で病院へ搬送されました。
病院の治療・手術
来院後、救命救急センターでは喉頭に詰まったスーパーボールをマギール鉗子にて摘出しました。
その後、挿管、心マッサージを実行します。
蘇生開始後20分で心拍は再開しましたが、自発呼吸はありませんでした。
肺出血を認めたため、サーファクタント洗浄および補充療法を実行します。入院直後の脳波は平坦であり、頭部単純CTでは脳室の構造も失われ、脳全体がlow densityを呈していました。
意識の回復はみられず、自発呼吸が無いため人工呼吸管理を継続しましたが、3歳の子どもは6ヶ月後に死亡しました。
類似傷害・事故
同様の類似事故は、日本全国で頻繁に起きています。
日本小児科学会のレポートにまとめられている4件の類似事故を簡単に紹介します。
類似事故(プラスチックボール)
2011年5月、1歳8ヶ月の女の子が直径20mmのプラスチックボールを誤飲して、窒息状態になりました。
苦しそうな様子の女の子を兄が発見し、母親が口の中に指を入れて取り出そうとしますが、プラスチックボールは取り出せません。
母親が救急隊を要請、女の子は病院へ搬送されてプラスチックボールを摘出します。
その後、人工呼吸管理を行いましたが、5日後に死亡しました。
類似事故(木製の球体)
2013年4月29日、1歳9ヶ月の男の子が直径25mmの木製の球体を2つ誤飲して、窒息状態になりました。
母親は男の子の口から1つの木製の球体を取り出しましたが、もう1つは取り出せません。
母親が救急隊を要請、男の子は病院へ搬送されて木製の球体を摘出します。
男の子は病院到着時は心静止状態でしたが、病院の懸命な処置により、6月11日に後遺症もなく退院となります。
なお、この時の直接医療費は2,739,290円でした。
類似事故(ガムボール)
2018年6月、4歳の男の子は母親と一緒にスーパーのエレベーターに乗り、エレベーター内でガムボールを口に入れて飛び跳ねていました。
エレベーターから降りようとした際、男の子の動きが止まり、もがきはじめます。
母親はガムボールによる窒息を疑い、すぐに背部叩打しますが、ガムボールは出てきません。
母親は周囲に助けを求め、すぐに胸骨圧迫が開始されます。
1分後、再び背部叩打を行った際にガムボールが出てきます。男の子は呼吸を再開し、意識も回復しました。
その後、男の子は病院へ搬送されます。病院では検査や処置が行われ、1週間後に後遺症なく退院しました。
なお、この時の直接医療費は500,650円でした。
類似事故(ビー玉)
2020年7月、1歳11ヶ月の男の子が苦しそうにしている様子を父親が発見、近くにビー玉が落ちていたことから誤飲を疑い、救急隊を要請します。
救急隊が到着した際、男の子は顔面蒼白で口唇チアノーゼがありました。背部叩打法を行うも異物は排出されず、酸素投与を開始後に救急搬送されます。
その後、病院で直径17mmのビー玉が摘出されました。
病院での検査や処置の後、男の子は同日夕方には後遺症なく退院しました。
予防と対策方法
日本小児科学会によると、3歳の子どもの最大開口口径は39mmです。今回の事故の原因となったスーパーボールの直径は35mmであり、十分に口の中に入ります。このスーパーボールを2つ口に入れれば、奥に入ったスーパーボールは喉頭部に嵌入しやすい状況となります。
スーパーボールは外表面がツルッとしており、いったん喉頭部に嵌入すると取り出すことは大変難しく、今回のような事故へとつながります。
日本小児科学会によると、スーパーボールは口に入らない直径45mm以上で製造すること、スーパーボールに通気孔を開けることなど、安全のための規制が必要とのことです。
一般家庭で実践できる対策は、小さなボールで遊ばないことです。
ボールで遊ぶ際は、口に入らない直径45mm以上のものを購入しましょう。大きめのカラーボールなどがおすすめです。
また、子どもに窒息の可能性がある場合は、以下の処置を行いましょう。
意識がある場合:「胸部突き上げ法」と「背部叩打法」を数回ずつ交互に行います。
意識がない場合:心肺蘇生(CPR)を行いながら119番通報し、救急車を呼びます。
意識がある場合:「腹部突き上げ法」を行います。
意識がない場合:心肺蘇生(CPR)を行いながら119番通報し、救急車を呼びます。
小さなボールを飲み込んで窒息する事故は頻繁にあります。対策方法を覚えて、いざという時に実践できるようにしておきましょう。
出典:公益社団法人日本小児科学会「No.003 スーパーボールの誤飲による窒息」