男の子(0歳9ヶ月)が、イヤホンの金具部分を誤飲する事故が発生しました。
家族が誤飲の可能性にすぐ気が付いたため、早期検査と摘出手術を受けることができました。
日本小児科学会によると、生後6ヶ月を過ぎた乳児はつかんだ物を何でも口に入れるため、誤飲事故は全国で頻繁に起きています。
本記事では、事故の原因や未然に防ぐための対策方法を日本小児科学会が公開した情報を元に紹介します。同様の事故が起きないように対策を学んでください。
目次
事故発生の原因
2011年4月24日の午後7時ごろ、男の子(0歳9ヶ月)は嘔吐をし、家族は調子が悪いのだろうなと思っていました。
その後、祖母がイヤホンのゴム持っていることに気づき、部屋を見たところイヤホンが破損していました。部品がないところがあり、誤飲の可能性を心配して近くの病院を受診しました。
病院の治療・手術
病院での検査後、イヤホンのスピーカーの金具部分を飲み込んだ食道異物と診断されました。
スピーカーの網部分のへりは繊維が引っかかるような細かい凸になっていました。鋭利ではありませんでしたが、バルーン・カテーテルで除去できました。
類似傷害・事故
同様の類似事故は、日本全国で頻繁に起きています。
日本小児科学会のレポートにまとめられている3件の類似事故を簡単に紹介します。
類似傷害・事故(キーホルダーの留め金)
2014年9月15日、女の子(1歳)は夜間より咳と微熱がありました。
9月16日の朝、病院を受診して吸入・吸引、内服薬の処方を受けました。
発熱と咳が続いていたため、9月18日午前9時に再度病院を受診しました。
胸部X線写真を撮ったところ、右肺の陰影および正中に円柱状の陰影を認めました。
その後、内視鏡的に鉗子で摘出しました。キーホルダーの留め金(5mm×15mm)が食道粘膜にはまりこみ食い込んでいました。
後遺症はなく、9月22日に無事退院しました。
類似傷害・事故(プラスチックチェーン)
2020年8月のある日、女の子(0歳10ヶ月)と姉は遊んでいました。
その様子を見ていた父親は、女の子が何かを口に含んでいるような気がして口腔内を確認しますが、異常はありませんでした。その後、父親は#8000(子ども医療電話相談事業)に問い合わせましたが「元気であれば問題ない」と言われました。
その後、女の子の食欲がなくなり、嚥下を嫌がる様子がありました。
近くの小児科を受診して異物誤飲が疑われますが、胸部X線では異常が指摘されませんでした。
来院から2日目、左首に発熱がありました。皮膚科を受診して抗菌薬を処方されますが改善しませんでした。
来院から3日目、再度小児科を受診し大学病院を紹介されました。
大学病院へ入院となり1週間様々な検査が行われました。
左首の原因が分かりませんでしたが、病歴を聴取しなおして誤飲を疑いました。
小児科来院から13日後、頸部造影CT検査で頸部食道に星型の異物を認めました。
全身麻酔下に食道直達鏡検査を施行し、先端がフック状のデバイスで異物を摘出しました。
小児科来院から28日目、女の子は退院し、外来での経過観察を続けることになりました。
類似傷害・事故(クリスマスオーナメントの金具)
2018年2月のある日、発熱と喉の異常がありました。
病院を受診し、インフルエンザと診断されて抗ウイルス薬の内服が開始されました。
その後、母親はクリスマスオーナメントボールの金具がなくなったことに気づきました(いつ誤飲したか不明)。女の子は発熱が続き、経口摂取が困難となったため再度病院を受診しました。
胸部X線写真と頸部単純CT検査で、頸部にV字の針金状の部品を認め、異物誤飲と診断され別の医療機関を紹介されました。
入院2日目、全身麻酔下にて消化器内科医師により上部消化管内視鏡を用いて摘出されました。
手術後の経過は順調で、入院12日目に退院しました。
予防と対策方法
日本小児科学会によると、生後6ヶ月を過ぎた乳児はつかんだ物を何でも口に入れ、100%誤飲するといっても過言ではないとのことです。
イヤホンは子どもの手が届く場所に置かれていることが多い製品ですが、現在のところ他の誤飲事故は報告がありません。しかし、イヤホンのパーツは子どもがかじっても外れない構造にする必要があると言えるでしょう。
一般家庭で実践できる対策は、乳児の手の届く範囲に誤飲事故が起きる可能性のある物を置かないことです。
子どもから目を離す場合は、ベビーサークルなど安全な囲いの中でのみ遊ばせるようにしましょう。
また、子どもが誤飲して窒息の可能性がある場合は、「胸部・腹部突き上げ方」や「背部叩打法」など窒息時のマニュアル処置を行いましょう。
意識がある場合:「胸部突き上げ法」と「背部叩打法」を数回ずつ交互に行います。
意識がない場合:心肺蘇生(CPR)を行いながら119番通報し、救急車を呼びます。
意識がある場合:「腹部突き上げ法」を行います。
意識がない場合:心肺蘇生(CPR)を行いながら119番通報し、救急車を呼びます。
対策方法を覚えて、いざという時に実践できるようにしてください。
出典:公益社団法人日本小児科学会「No.023 イヤホンのパーツの誤飲による食道異物」