5歳の女の子が、自転車のサドルが原因で外陰部から出血する事故が発生しました。
自転車での外出から帰宅した後に股間の痛みを訴え、出血が確認されたため救急搬送されるに至りました。
最終的に5歳の女の子は無事に退院しましたが、自転車選びの重要性がわかる事故となっています。
本記事では、事故の原因や未然に防ぐための対策方法を日本小児科学会が公開した情報を元に紹介します。同様の事故が起きないように対策を学んでください。
目次
事故発生の原因
9月17日の16時ごろ、5歳の女の子は母親と4歳の妹と3人で、自転車に乗って1時間程度の外出をしました。先頭には補助輪なしの自転車に乗る5歳の女の子、その後ろには補助輪付き自転車に乗る妹が続き、さらにその後ろには母親が続きました。
妹は補助輪付きの自転車で遅く、5歳の女の子は何度も停車して妹を待つことはありましたが、段差に落ちたり、何かに衝突したりという明確な事故は起きませんでした。
帰宅直後、5歳の女の子はトイレでの排尿後に股間が少し痛いと母親に訴えました。母親は5歳の女の子をすぐに入浴させ、股間を洗うように指示しました。入浴後に局所を確認したところ、外見に大きな変化はありませんでしたが、わずかに出血していました。
その後、5歳の女の子はそのままソファで横になって寝てしまい、22時頃に家族が寝室に運ぼうとしたところ、着衣が多量の血液で濡れていることに気づき、救急車で来院しました。この時、局所は紫色に腫脹して痛みの訴えも増えていました。
5歳の女の子が乗っていた自転車は、量販店で購入した外国製のものでした。5歳の女の子が乗ると、わずかに地面に足がつかないため、危ないかもしれないと母親は感じていました。また、以前にも自転車に乗った後に股間が痛いと訴えることがありました。
サドルは周囲が硬質のプラスチックで覆われ、サドルの前方側面は座面クッションより少し隆起しています。サドルを一番下げた状態で、外陰部が当たる部分の地面からの高さは55cmでした。前傾姿勢で騎乗した際、外陰部に強い圧迫が起こりうる構造でした。
病院の治療・手術
来院時、外陰部(右の小陰唇と大陰唇のあいだ)に2cmの裂傷があり、動脈性の出血が確認されました。入院し、全身麻酔下で縫合処置を施行しました。
ICUへの入室2日を含め、計3日間の入院管理と外来での経過観察を行いました。
その後、5歳の女の子は後遺障害もなく経過観察も終了しました。
予防と対策方法
自転車のサドルによる圧迫症状には、成人男性では勃起障害、成人女性では知覚鈍麻やしびれ感があります。会陰部(肛門と外陰部およびその周辺)には神経や血管が密に分布しており、この部分に一定時間以上の強い圧迫が加わると症状が出ます。このようなサドルの傷害は「サドル外傷」として知られています。
今回の事故で使用された自転車のサドルは硬いプラスチック製であり、外陰部の前面が当たるサドルの部分が隆起し、傷害が起こりやすい構造でした。おそらくサドルのプラスチックと恥骨のあいだで圧迫されて外陰皮下の血管が切れ、それが動脈であったために多量の出血に至っています。
サドルの材質としてプラスチックは不適切であり、サドルの前後方向の角度は地面に対して平行であることが望ましいです。また、サドル前部の左右方向の幅が狭いことも強い力がかかった要因の一つです。さらに、ハンドルを強く握って前傾姿勢になった際、外陰部に大きな力がかかったと思われます。
ご家庭で実践できる対策としては、自転車の選び方に注意することです。
まず、サドルは柔らかい材質を選びましょう。そして、サドルが前後方向の角度が地面に対して平行であり、サドルの前部分の幅が広いことが望ましいです。
また、サドルの高さは足の裏全体が地面につく状態で固定する必要があります。保護者は子どもの成長を考えて大きめの製品を購入する場合が多いですが、使用する子どもの体格に合わせたサイズの自転車を選んでください。
最後に、日本製と海外製の差もあります。同じサイズと表示されていても海外製の自転車は少し大きい場合があります。海外製の子ども用自転車を購入する際は、自転車メーカーや販売店に相談するようにしてください。
出典:公益社団法人日本小児科学会「No.015 自転車のサドルによる外陰部外傷」