1歳の女の子がカルピスサワーを誤飲して、急性アルコール中毒で救急搬送される事故が発生しました。
店員がカルピスソーダとカルピスサワーを間違えて運び、1歳の女の子はそれを一気飲みしてしまいました。
最終的に1歳の女の子は無事に退院しますが、この事故は外食の際にどこでも起き得る可能性があります。
本記事では、事故の原因や未然に防ぐための対策方法を日本小児科学会が公開した情報を元に紹介します。同様の事故が起きないように対策を学んでください。
目次
事故発生の原因
ある日の19時45分頃、1歳の女の子と両親は焼肉店で外食をしていました。
普段、両親は1歳の女の子に清涼飲料を与えていませんでしたが、外食時には特別に許可しており、カルピスソーダを注文しました。
しかし、店員が誤ってカルピスサワーを持ってきて、誰も気付かずに1歳の女の子はカルピスサワーを一気飲みしました。
その後、顔面紅潮と歩行時のふらつき、興奮の症状が見られ、20時20分に救急搬送されました。
病院の治療・手術
病院到着時、1歳の女の子の体温は36.7℃、SpO2 100%(room air)、HR 150/分、体重12kgでした。誤飲後1時間以内であり、念のため温生食にて胃洗浄(1000ml)を行いました。
一般検血、血液生化学、血糖には明らかな異常を認めず、静脈血ガスはBase excessがマイナス5.7と低く、乳酸が48mg/dlと高かったとのことです。
1号液400mlを2時間点滴静注の後、3号液50ml/時間の維持輸液で経過観察し、処置後のバイタルサインは安定、痙攣などはありませんでした。
翌朝、1歳の女の子は意識清明で歩行も正常になり、診察でも異常なく退院しました。
予防と対策方法
日本中毒情報センターの受信報告によると、5歳以下の飲料用アルコールの誤飲は、2005年で165件、2006年で132件、2007年で169件となっており、年齢では1歳が約6割、0歳が2割を占めています。
また、5歳以上ではフルーツ風味のアルコール飲料をジュースと間違えて飲む場合が多く、1994年から国民生活センターは企業に対して何度も警告を出していますが、未だに同じ事故が起きています。
最近では、乳幼児を連れて居酒屋に夫婦で出かける家族が増えており、今回のような事故が起きています。店員がサワーとソーダを聞き違えたり、飲料の作成時に間違えることもあります。
また、大人が飲むつもりでテーブルに置いたアルコール飲料を子どもが飲んでしまうこともあります。酎ハイは甘い飲料であるため、幼児でも間違えて一気飲みしてしまうとのことです。
日常的にアルコールを提供する飲食店には、乳幼児がテーブルにいる際は店員2人でアルコール飲料か否かを確認する作業が必要であると言えます。しかし、実際に現場ではそこまでできていません。
事故を未然に防ぐためには、保護者が乳幼児に提供された飲料の匂いなどを確認し、アルコール飲料と間違われていないことを確認する必要があります。
また、テーブルのアルコール飲料を乳幼児の前に置かないようにし、誤飲を避けることも必要です。もちろん、アルコール飲料は大人しか飲めないという教育も必要になります。
子どもは大人に比べて身体が小さいため、少量のアルコールでも血中アルコール濃度が高くなります。急性アルコール中毒には、血中アルコール濃度が高まることによって呼吸・循環中枢が抑制されて死に至る事例もあります。アルコール飲料を提供する飲食店の飲料には、日常的に気を付けてください。
出典:公益社団法人日本小児科学会「No.012 アルコール飲料の誤飲による中毒」