2021年11月、5歳の子どもが「棒つきキャンディ」を誤飲し、緊急の摘出手術を受ける事故が発生しました。
最終的に5歳の子どもは無事に退院しましたが、キャンディの棒は喉を突く可能性もあり、飲み込むと自然排泄のできない危険なお菓子です。
本記事では、事故の原因や未然に防ぐための対策方法を日本小児科学会が公開した情報を元に紹介します。同様の事故が起きないように対策を学んでください。
目次
事故発生の原因
事故発生当日、5歳の子どもは車の助手席(ジュニアシート付き)に座り、母親は車を運転していました。なお、後部座席には叔母と5歳の子どもの妹(隣に大人の存在が必要)が同乗していました。
5歳の子どもは車の走行中に「棒つきキャンディ」をなめ始め、口にくわえたまま寝てしまいます。
その後、目が覚めて後部座席にいる妹の方を振り向いた際、あくびが出て、口に入れていた「棒つきキャンディ」を丸ごと飲み込んでしまいます。
「棒つきキャンディ」を飲み込んだ瞬間を大人は見ていませんでしたが、5歳の子どもが「棒つきキャンディ」を飲み込んだことを母親に伝え、救急外来を受診しました。
なお、5歳の子どもが飲み込んだ「棒つきキャンディ」は明らかになっていませんが、「チュッパチャップス ミニ」だと思われます。
病院の治療・手術
誤飲から約30分後に親子は来院します。5歳の子どもに自覚症状はなく、バイタルサインおよび身体所見に特記すべき異常はありませんでした。
また、来院直後の単純X線検査でも異物の存在や位置を確認できませんでした。
しかし、誤飲から約1時間時点で施行した単純CT検査にて、胃内に誤飲した「キャンディの棒」らしき直線状の空気透亮像(以下画像の矢印部分)が確認されます。
72mmという長さがあることから、緊急摘出の判断がされました。
「棒つきキャンディ」の誤飲から約4時間後、鎮静下にて上部消化管内視鏡で異物を摘出しました。
無事に摘出手術は終了し、一晩の経過観察入院を経て5歳の子どもは翌朝に退院しました。
なお、日本小児科学会のレポートによると、直接医療費は235,400円(入院費)だったとのことです。
予防と対策方法
「棒つきキャンディ」は棒を持って口から出し入れして舐めるため、いわゆる「あめ玉」に比べると小さな子どもでも誤嚥や誤飲しにくいキャンディです。実際、今回の誤飲事故には前例がありません。しかし、商品の安全・品質強化に向けて、包装裏面に誤飲や喉突きの注意表示を追加したり、棒部分の素材を見直す必要があると考えられます。
それでも棒つきキャンディが好きな子どもは多く、アンパンマンなどの子ども向け棒つきキャンディも多く販売されています。
しかし、今回の事例のように危険があるからと避けるのではなく「きちんと座ってなめる」「口にくわえたまま遊ばない」「お話しするときは口から出す」など、基本的なことを繰り返し伝え、実践学習させることが大切です。
何度か試してみて、もしこのような約束事がまだ理解できない場合には、棒つきキャンディは与えないようにしてください。
そして、今回の事例では大きな事故にはなりませんでしたが「棒付きキャンディ」の棒は自然排泄の困難が予測される危険異物に該当します。また、棒付きキャンディは喉を突いてしまう危険性も高いお菓子です。胃より近位の上部消化管に停滞する長さ5cm以上の異物は、緊急摘出の適応となります。
また、もし「あめ玉」などを飲み込んで窒息の可能性がある場合は、以下の処置を行いましょう。
意識がある場合:「胸部突き上げ法」と「背部叩打法」を数回ずつ交互に行います。
意識がない場合:心肺蘇生(CPR)を行いながら119番通報し、救急車を呼びます。
意識がある場合:「腹部突き上げ法」を行います。
意識がない場合:心肺蘇生(CPR)を行いながら119番通報し、救急車を呼びます。
今回の「棒付きキャンディ」を丸ごと飲み込む事例はレアケースですが、「あめ玉」などで窒息する事故は頻繁にあります。対策方法を覚えて、いざという時に実践できるようにしておきましょう。
出典:公益社団法人日本小児科学会「No.112 棒つきキャンディの誤飲」