女の子(0歳11ヶ月)が電気ケトルを倒して全身にやけどを負う事故が発生しました。
この家庭では日常的に電気ケトルを床に置いて使用しており、常に事故と隣り合わせの環境でした。
最終的に女の子は退院しましたが、事故から1年経ってもリハビリをしている状況です。
本記事では、事故の原因や未然に防ぐための対策方法を日本小児科学会が公開した情報を元に紹介します。同様の事故が起きないように対策を学んでください。
目次
事故発生の原因
2010年10月17日の午後10時30分ごろ、母親は女の子(0歳11ヶ月)の激しい泣き声に気づいて居間へ駆けつけました。
女の子(0歳11ヶ月)は床の上にあった電気ケトルを倒してしまい、熱湯の溜まりの中に腹這いになりました。母親は日頃から電気ケトルを床の上において使用していました。
病院の治療・手術
母親はすぐに女の子を浴室に連れて行き、シャワーで冷水をかけ、約5分後に救急車を呼びました。
救急車に乗ることはできましたが、近隣に収容可能な病院がなく、事故から約1時間経過してから搬送となりました。
病院搬入時のバイタルサインに異常はありませんでしたが、広範囲にやけどがあるため集中治療室での治療となりました。
事故から4日後、特に合併症はなく一般病床へ転棟となりました。
事故から1ヶ月後、やけどのひどい左手掌への皮膚移植を実施しました。
事故から2ヶ月後、女の子は退院となりました。
事故から半年後、左手掌の瘢痕拘縮に対する処置を行いました。
事故から1年後、左手の瘢痕による機能障害に対しリハビリを継続しています。
なお、入院費の直接医療費は5,013,340円だったとのことです。
類似傷害・事故
9月17日13時50分ごろ、男の子(3歳)は親戚の子と遊んでいた際に電気ケトルの電気コードに足をひっかけてしまいました。男の子は転倒し、同時に電気ケトルが倒れて熱湯をかぶってしまいます。
男の子は病院へ搬送され、局所療法(洗浄・外用剤・被覆剤)を継続しました。入院はせず、自宅での治療をはさみながら計6回の外来通院をしました。
受傷後3週間の時点で良好な上皮化を確認して通院を終了しました。
しかし、やけどの後は身体に残っており、今後も機能面で後遺症が残る可能性はあります。
予防と対策方法
電気ケトルは、短時間で「熱湯」を作れる便利な電化製品です。
便利な製品ではありますが、保護者が短時間でも目を離すと乳幼児でも簡単に熱湯に触れることができるため、使用場所や管理方法には気をつける必要があります。
また、電気ケトルの製品コンセプトは「やかん」であるため、蓋は簡単に開くものが多く、注ぎ口は大きく一度に大量の熱湯が出るようになっています。
その他の機能として「コンロをふさがない」「場所をとらない」「どこにでも持ち運べる」「コンパクトで軽い」という利点がありますが、コンセントとケーブルが必要なため、小さな子どもはケーブルに足を引っ掛ける場合があります。
家庭でできる対策は、電気ケトルの使用場所や管理方法を見直し、事故が起きないように気をつけることです。具体的には、以下のことに気をつけてやけどの事故から子どもを守りましょう。
また、電気ケトルは倒れてもお湯がこぼれない構造のもの安全です。
もし子どもが火傷を負ってしまったら、以下のことに気を付けてください。
- よく冷やしてあげることが最も大切です。痛みがなくなるまで冷やしましょう。
- 熱傷部分にさわらないようにしましょう。
- アロエを塗るなどの民間療法は止めましょう。
- 市販されている冷却用シートは、熱傷には使えません。
- 熱湯などをかぶった場合には、服の上からシャワーなどの流水で冷やしましょう。
特に、服を脱がさずにシャワーなどの流水をかけることが重要です。慌てて服を脱がしてしまうと、ただれた皮膚が剥がれて重症化してしまうことがあるため注意が必要です。
そして、もしやけどの影響で水疱ができたり皮がむける部分が広範囲におよぶ場合は、すぐに救急車を呼んで医療機関を受診してください。爆発などによるやけどや化学薬品によるやけどの場合も、すぐに救急車を呼んで医療機関を受診してください。
出典:公益社団法人日本小児科学会「No.028 電気ケトルによる顔面・胸部・上肢熱傷(事例1)」「No.028 電気ケトルによる顔面・胸部・上肢熱傷(事例2)」