室内用遊具で遊んでいた女の子(3歳)の右目に金属棒が刺さる事故が発生しました。
高さの調節できる金属棒は子どもでも簡単に取り外せる状態で、転落の際に刺さったものと思われます。
最終的に女の子は命の危機を脱しましたが運動性失語が見られ、今後の発達への影響が懸念されています。
本記事では、事故の原因や未然に防ぐための対策方法を日本小児科学会が公開した情報を元に紹介します。同様の事故が起きないように対策を学んでください。
目次
事故発生の原因
2010年7月19日の午後3時半、自宅2階の子ども部屋で女の子(3歳)は姉(4歳)と弟(1歳)の3人で遊んでいました。周囲に大人はおらず、母・祖父は3階にいました。
3人は室内用遊具(ジャングルジム、滑り台、ブランコが一体となったもの)で遊んでいました。
室内用遊具のブランコを支える棒の両端には17cmくらいの金属棒が差し込まれていました。これは高さ調整のために固定されておらず、子どもの力でも簡単に引き抜ける状態でした。
そして、遊んでいるときに女の子の右眼球に金属棒が刺さりました。姉が引き抜こうとしたが完全には抜けず、弟が3階の母を呼びに行きました。
目撃者はおらず、なぜ右眼球に金属棒が刺さったのかは不明です。
病院の治療・手術
救急車で病院へ搬送された際、女の子(3歳)は泣き叫んでいましたが意識ははっきりとありました。
頭部CTにて右眼窩から頭蓋底を貫通して金属棒が位置しており、また脳内を貫くように左頭頂葉に高吸収域を認め、この部分に金属棒が刺さっていると推測されました。
救急外来で鎮静下に抜去を試みますができず、全身麻酔下に開頭術を施行し、ようやく抜去できました。結果的には頭部CTには写らなかったプラスチックの部分が引っかかっていたことが判明しました。
手術翌日には抜管でき、翌々日には経口摂取も可能となりました。
受傷後4日目から高ナトリウム血症が出現し、尿崩症としてデスモプレッシンの点鼻等を施行しました。
受傷後6日目より全身性の痙攣が出現し、抗痙攣薬にてコントロールを施行しました。
命の危機は脱しましたが、運動性失語(名前を呼べば振り向いてくれるのに、名前を聞いても答えられない状況など)も見られ、今後の発達への影響が懸念されています。
予防と対策方法
この事故は、2010年8月10日に消費者庁が公表し、事故の発生から25日後(8月13 日)に製作会社によりリコールが行われました。
17cmの金属棒が右目に刺さり、先端は後頭部にまで達しました。なぜこの事故が発生したのか推測は難しいですが、かなりの力が作用したと思われます。そう考えると、女の子が高所から転落したときに刺さったと推測されます。
つまり、金属棒が固定されていれば今回の事故を起きなかったとも言えます。金属棒はジャングルジムの高さを変えるときや解体・収納する際に抜くもので、子どもの力でも簡単に引き抜ける状態でした。
もしご家庭に同じような構造を持つ遊具がある場合は、取り外せる金属類はテープなどで固定するのが望ましいです。ジャングルジムやブランコには転落の可能性があり、今回の事故から推測されたように転落した際に取れた金属が刺さることも考えられます。金属の出っ張り部分を布で覆うのも効果的です。
絶縁テープはのり残りがせず、はがした後もベタつかないのでおすすめです。テープ同士がくっつき合う自己融着の性質が利用されています。
出典:公益社団法人日本小児科学会「No.021 室内ブランコの部品による頭蓋内損傷」