3歳の男の子が夏祭りのスーパーボールを誤飲して、窒息する事故が発生しました。
誤飲を疑った父親が119番し、最終的に3歳の男の子は病院でスーパーボールを摘出します。
スーパーボールに限らず、乳幼児による小さなボールの誤飲事故は、どのご家庭でも起こり得る事故です。それぞれのご家庭で対策方法を学び、万が一に備える必要があります。
本記事では、事故の原因や未然に防ぐための対策方法を日本小児科学会が公開した情報を元に紹介します。同様の事故が起きないように対策を学んでください。
目次
事故発生の原因
8月10日午後7時頃、3歳の男の子の父親が夏祭りの「スーパーボールすくい」で約10個のスーパーボールを獲得して持ち帰りました。
その後、父親はトイレのため約5分離れ、3歳の男の子はスーパーボールを使って一人で遊んでいました。
午後8時頃、3歳の男の子が苦しがり、声も出せない状態になっているところを父親が発見します。
父親はスーパーボールを口に入れたところは目撃していませんでしたが、周囲にスーパーボールが散乱しており、窒息を疑って救急搬送を要請します。
病院の治療・手術
救急隊が現場に到着した時、3歳の男の子に意識障害はありませんでしたが、チアノーゼ(血液中の酸素の不足が原因で皮膚が青っぽく変色すること)が認められました。
酸素投与によりチアノーゼは消失しますが、努力して呼吸をしているような状態が続き、また右半身を下にして横になる姿勢を取ろうとする傾向がありました。搬送中、呼吸状態は若干改善しました。
午後8時54分、病院に到着します。
リザーバー付きフェイスマスクで酸素投与下のSpO2は99%、心拍数154/分、呼吸数30/分でした。意識はありますが苦悶の表情を浮かべ、著明な吸気性喘鳴と陥没呼吸、胸郭運動の低下と呼吸音の減弱がありました。発声はわずかに可能でしたが、発語は不能でした。嗄声、咳はありませんでした。酸素投与を継続し、直ちにモニターを装着、静脈ラインの確保しました。
その後、頸部側面レントゲン写真にて、下咽頭に嵌入した直径約2cmの球形異物(スーパーボール)を発見します。耳鼻科医に応援を要請し、気管内挿管、緊急気管切開の準備を行った後、午後9時30分にマギール鉗子にてスーパーボールを摘出します。
その後、約2時間の経過観察があり、異常がないため帰宅となりました。
類似傷害・事故
スーパーボールの類似事故で窒息死するケースもあります。No.3のレポートをご覧ください。
この事故では、3歳の子どもが口の中にスーパーボールを2つ入れて遊んでたところを母親に注意され、驚いて2つのスーパーボールのうち1つを吸い込んで窒息します。
母親は救急隊を要請し、救命救急センターでスーパーボールが摘出されます。
しかし、3歳の子どもの呼吸状態は悪く、挿管、心マッサージを実行されます。蘇生開始後20分で心拍は再開しますが、自発呼吸はありませんでした。
その後、病院で継続して処置が行われますが、意識の回復はみられず、自発呼吸が無いため人工呼吸管理を継続しました。6ヶ月後、3歳の子どもは死亡しました。
予防と対策方法
日本小児科学会によると、3歳の子どもの最大開口口径は39mmです。今回の事故の原因となったスーパーボールの直径は23mmであり、余裕で口の中に入ります。
スーパーボールは外表面がツルッとしており、いったん喉頭部に嵌入すると取り出すことは大変難しく、今回のような事故へとつながります。
スーパーボールはお祭りの屋台でしばしば催されている「スーパーボールすくい」により、とても簡単に入手でき、乳幼児の手にも触れやすいおもちゃです。
その一方で、スーパーボールすくいのボールは包装されておらず、注意書き等の記載もありません。そのため、保護者に危険物であることが周知されにくい状況があります。
日本小児科学会によると、スーパーボールは口に入らない直径45mm以上で製造すること、スーパーボールに通気孔を開けることなど、安全のための規制が必要とのことです。
一般家庭で実践できる対策は、乳幼児の頃は小さなボールで遊ばないことです。
もしボールで遊ぶ際は、口に入らない大きなボール(直径45mm以上)のもので遊びましょう。大きめのカラーボールなどがおすすめです。
また、子どもに窒息の可能性がある場合は、以下の処置を行いましょう。
意識がある場合:「胸部突き上げ法」と「背部叩打法」を数回ずつ交互に行います。
意識がない場合:心肺蘇生(CPR)を行いながら119番通報し、救急車を呼びます。
意識がある場合:「腹部突き上げ法」を行います。
意識がない場合:心肺蘇生(CPR)を行いながら119番通報し、救急車を呼びます。
小さなボールを飲み込んで窒息する事故は、どの家庭でも起き得る事故です。対策方法を覚えて、いざという時に実践できるようにしておきましょう。
出典:公益社団法人日本小児科学会「No.011 スーパーボールの誤飲による窒息」