浴槽へ転落した6歳の女の子が全身やけどを負う事故が発生しました。
6歳の女の子は友人と自宅でかくれんぼをしており、浴槽のフタが外れて再沸騰中(追い焚き)のお湯に落ちました。
6歳の女の子は全身の80%に重度のやけどを負い、皮膚移植の手術も行いました。
本記事では、事故の原因や未然に防ぐための対策方法を日本小児科学会が公開した情報を元に紹介します。同様の事故が起きないように対策を学んでください。
目次
事故発生の原因
11月18日午後4時30分頃、6歳の女の子は自宅で友人とかくれんぼをして遊んでいました。
6歳の女の子は浴室に隠れようとして、浴槽のフタ(折りたたみ式)に乗ったところフタが外れ、高温(80℃前後)の浴槽に転落しました。
ドンという音の後「熱い!」という声が聞こえたため、母親が浴室に駆けつけたところ、6歳の女の子が熱湯から這い上がり衣服を脱ぎ棄てているのを発見しました。
母親はすぐに119番に通報しました。
6歳の女の子がかくれんぼをして遊んでいた時、母親は夕食の支度をしていました。子どもが浴室へ行くのには気づいていましたが、まさか風呂のフタに乗るとは思っていませんでした。
また、夜に向けて風呂を沸かしなおす予定であり、お湯は浴槽の7~8分目までたまっていました。風呂の熱湯供給システムは残り湯を循環させており、炉内で再沸騰させていました。午後4時に点火し、30分でOFFになるように設定をしていました。
※古いタイプのタイマー式熱湯供給システムでは、今回のように非常に高温になる場合があります。
病院の治療・手術
午後5時33分、6歳の女の子は救命センターに搬入されました。
熱傷(II度)の診断がされ、受傷範囲は全身の80%に及びました。
搬送後、洗浄・デブリードマン(感染・壊死組織を除去し、創を清浄化することで他の組織への影響を防ぐ外科処置)が実施されました。
溶血(寿命を迎える前の赤血球が何らかの原因により破壊されること)、創感染(皮膚を縫合している創部に感染が起こっている状態)、髄膜炎(脳の周りを覆っている髄膜に炎症がおこる病気)などを発症したものの治療は奏効し、約1ヶ月後の12月19日には車椅子に乗って自力摂食や読書が可能な状態となりました。
12月下旬には、一部熱傷(III度)の部分に対して皮膚移植が行われました。
予防と対策方法
大量の湯をためておく浴槽はお湯が高温である場合、全身の熱傷で死亡あるいは重症度が高い傷害となります。
過去には、熱でやわらかくなる浴槽のフタや、子どもの体重で簡単に曲がるフタが傷害や溺れる事故ににつながる事例もありました。浴槽のフタは万が一に備えて丈夫な物にしておきましょう。
しかし、浴槽のフタの耐荷重にも限界があります。
そもそも乗ることのできないお風呂の保温シートもおすすめです。
今回のような事故を未然に防ぐためには、古いタイプ給湯システムそのものの交換または改善が望まれます。
例えばお湯の表面温度が50℃以上の場合はセンサーが警告を出したり、そもそも再加熱でも50℃を超えないシステムなどが必要です。
また、家庭でできる対策としては自宅でかくれんぼをしないようにすることです。今回の場合、浴槽のお湯の温度が高くなくても溺れていた可能性もあります。
自宅でのかくれんぼで8歳の子どもがドラム式洗濯機の中に隠れて窒息死した事故もあります。
日本小児科学会によると、子どもが自宅でかくれんぼをすると日常では使用しない狭い場所や高い場所などに隠れて、通常では考えにくい傷害が発生するとのことです。危険なことを事前に子どもに教えていても、好奇心が勝ってしまったり予想外の使い方をする場合もあります。
かくれんぼは家でのよくある遊びの一つですが、こういった事故を未然に防ぐためにそもそも自宅でのかくれんぼを禁止にすることも必要かもしれません。
出典:公益社団法人日本小児科学会「No.010 浴槽への転落による全身熱傷」