公園のうんていで遊んでいた6歳の女の子が窒息する事故が発生しました。
6歳の女の子は自転車用のヘルメットをかぶったまま遊んでおり、ヘルメットの顎ひもが鉄棒に引っかかり窒息となります。
最終的に女の子は無事に退院しましたが一時は心肺停止に陥り、35日間も入院していました。
本記事では、事故の原因や未然に防ぐための対策方法を日本小児科学会が公開した情報を元に紹介します。同様の事故が起きないように対策を学んでください。
目次
事故発生の原因
ある日、学校から帰宅した6歳の女の子は自転車で市設営の公園に向かい、友達3人とうんていで遊んでいました。
6歳の女の子はヘルメット(縦25cm、横20cm)をかぶり、うんてい棒の上部(高さ1.5m)にのぼり遊んでいました。
そして、足を滑らせてうんてい棒の間に落下します。ヘルメットは鉄棒と鉄棒の間(幅17.5cm)にひっかかり、顎紐で宙吊りになりました(以下画像参照)。
一緒に遊んでいた友人が周囲の大人に助けを求め、近所の人により6歳の女の子の窒息は解除されました。
しかし、救急隊到着までの約10分間、心肺蘇生行為はありませんでした。
病院の治療・手術
事故発生後、約10分で救急隊が現着します。
救急隊は6歳の女の子の心肺停止を確認し、直ちに心肺蘇生術が実施されます。心拍・呼吸は再開しますが、意識消失状態が続きます。
救急外来到着後、GCS3点、すぐに気管内挿管を行われ、36時間の軽度低体温(34℃)療法を開始します。低体温療法の開始後、血圧低下、高血糖、低カリウム血症があり、各々補正を要しました。
入院2日目、0.5℃/日の速度で復温した後、筋弛緩剤と鎮静薬を中止します。この時点で自発運動が確認され、名前を呼ぶと反応しました。
入院8日目、頭部MRI検査では両側大脳半球後頭葉の皮質にT2強調画像、FLAIR画像で高信号域を認めlaminar infarctionの所見でした。
入院9日目に抜管し、入院10日目に経管栄養と理学療法を開始します。
その後、劇的に状態が改善して入院35日目に退院します。
そして事故から38日目には、学校の通学も再開しました。
予防と対策方法
前提として、「自転車用ヘルメット」と「遊具用のヘルメット」は仕様が大きく異なっています。それぞれのヘルメットには使用する目的があり、同じような作りにはなっていません。
例えば、自転車用のヘルメットは顎ひもが外れないことを前提としていますが、遊具で遊ぶ時のヘルメットは自己解放型バックルが採用されており、一定以上の荷重で顎ひもがリリースされる機能が備わっています。
しかし、自転車用ヘルメットと遊具用のヘルメットを使い分けるのは現実的ではありません。
そのため実践できる対策は、遊具で遊ぶ際はヘルメットを身につけない(首の周りにひも状のものは身につけない)ことです。自転車乗車中だけヘルメットを着用し、公園ではヘルメットを外すように子どもに教育する必要があります。
そして、公園で事故が起きた際にすぐに大人が駆け付けられるように、防犯ブザーを常に持たせるようにしましょう。
また、日本公園施設行協会はうんていの鉄棒と鉄棒のあいだを23cm以上としています。販売されているヘルメットの形状を調査し、この23cmが妥当であるのかの検討は必要かもしれません。
そして、ヘルメットはヒモの材質や強度について検討し、窒息状態となった際にリリースする仕掛けが必要であると言えます。
出典:公益社団法人日本小児科学会「No.009 自転車用ヘルメットによる窒息」