4歳1ヶ月の女の子が、公園の噴水で陰部を怪我し出血する事故が発生しました。
最終的に女の子は無事でしたが、小さな子どもの陰部外傷の事故は多く、注意が必要です。
本記事では、事故の原因や未然に防ぐための対策方法を日本小児科学会が公開した情報を元に紹介します。同様の事故が起きないよう、それぞれのご家庭で対策方法を学びましょう。
目次
事故発生の原因
2016年6月26日の午後1時、女の子(4歳1ヶ月)とその家族は、公園のバラ園にある噴水で遊んでいました。ここは立ち入り禁止場所でしたが、日頃から多くの人が遊んでいました。
女の子が噴水の出る金属筒をまたいでいると、水が噴出され外陰部を直撃しました。流血が止まらなかったため、家族は慌てて近くの病院を受診しました。病院にて止血困難だったため、総合病院産婦人科へ救急搬送となりました。
病院の治療・手術
総合病院産婦人科にて、バイポーラーで焼却止血し、ピトレシンガーゼで圧迫止血が行われました。出血の軽快傾向を確認し、ピトレシンガーゼを腟内に留置して治療は終了しました。
翌朝、全身麻酔下で観察し、出血は認めず腟内のガーゼを抜去して終了しました。27日と28日に微熱がありましたが、29日には解熱、退院しました。
類似傷害・事故
類似傷害・事故(6歳3ヶ月)
2013年8月のある日、ホテル内のプールに設置されているジャグジー様のジェット水流出口付近に子ども数人が集まり、ジェット水流の圧により浮き輪が押されて進む遊びをしていました。
女の子(6歳3ヶ月)は、陰部がジェット水流の出口近くにあったため、ジェット水流が陰部を直撃しました。女の子はすぐに泣き出し、両親がすぐに近づきプールサイドで観察すると、女の子は陰部から出血していました。止血できたため自宅観察をしました。しかし3日後、再度出血したため救急外来を受診しました。
病院では小陰唇下部に裂傷を認めました。縫合を要する怪我ではなかったため、保存加療となりました。その後再出血はなく、排尿も問題なく行えたため、自宅での経過観察となり自然に治りました。
類似傷害・事故(3歳8ヶ月)
2017年7月7日、女の子(3歳8ヶ月)とその姉(8歳)と母親は入浴していました。母親は洗い場で洗髪をしており、女の子と姉は浴槽内で遊んでいました。
女の子が子ども用の風呂用手桶を浴槽底に横向きに置き、手桶の柄の部分にまたがるように正座をしながら跳ねたところ、柄の部分が陰部にぶつかり、激しく泣き出しました。母親が女の子を抱きかかえると、陰部から出血していました。
近くの小児科を受診し、会陰部外傷と診断されました。止血ができないため、産婦人科を紹介されました。産婦人科医の診察により、処女膜輪損傷、右小陰唇内側裂傷の診断され、同部位からの静脈性出血を認めました。1時間弱の圧迫により止血し、経過観察のため入院しました。その後再出血はなく、排尿も問題なく行えたため、自宅での経過観察となり、2日目に外来でフォローアップしましたが回復に向かっていました。
予防と対策方法
小さな子どもの陰部外傷のうち最も多いのは、女の子の会陰部外傷であり、続いて男の子の陰茎外傷、陰囊外傷です。
アメリカ合衆国での大規模な研究によると、女の子の会陰部外傷は4~7歳に多く、製品にまたがった状態で会陰部を受傷する「またがり外傷」が最多で、その原因は自転車や家具が多いです。
ジェット水流による女の子の会陰部外傷は海外で報告があり、水上スキーやジェットスキーなど比較的激しいウォータースポーツに関連する外傷、公園の噴水やプールのウォータースライダーやジャグジーなどのジェット水流による外傷があります。処女膜損傷や腟内外傷に至った場合には外科的処置を必要とする場合が多く、腟内パッキングや縫合処置が実施されています。
今回事故の原因である噴水やジャグジーは、日本でも日常でよく見られます。噴水が止まっているタイミングで水が出る筒をのぞき込み、急に水が噴出すれば目に怪我を負う可能性があります。また、口を近づけていれば口腔内や鼻孔に怪我を負う可能性もあります。
今回の事故が起きた場所は、立ち入り禁止でした。このような事故を避けるためにも、標識には従いましょう。このような事故が多発すると、公園は柵などを設置してアクセスできないようにしたり、水圧を調整する必要があります。
出典:公益社団法人日本小児科学会「No.064 女児の会陰部外傷」