1歳4ヶ月の男の子がミニカップゼリーのプラスチック容器を誤嚥する事故が発生しました。
最終的に、男の子は理学療法士である母親の早期対応のお陰で無事でした。
乳幼児が身近なものを口に入れて誤嚥・誤飲する事故は、どのご家庭でも起こる可能性がある事故です。それぞれのご家庭で対策方法を学び、万が一に備える必要があります。
本記事では、事故の原因や未然に防ぐための対策方法を日本小児科学会が公開した情報を元に紹介します。同様の事故が起きないよう、それぞれのご家庭で対策方法を学びましょう。
目次
事故発生の原因
2014年12月25日の午前9時7分、男の子(1歳4ヶ月)は兄と一緒におやつのミニカップゼリーを食べていました。いつも兄は自分一人で、男の子は母親がスプーンでカップからゼリーをすくって食べさせていました。しかし今回は、男の子が兄と同様に自分でカップを持って食べたがったため、カップごと手渡し、兄弟2人だけでリビングルームで食べていました。母親はキッチンで家事をしていました。
子どもが咳をしているのに気付きリビングに様子を見に行くと、男の子の顔色が悪く、横になっているのを発見しました。すぐに誤嚥を疑い、男の子を逆さまにして背中を叩きました。数秒後、ゼリーと一緒にミニカップゼリーの透明容器を吐き出しました。その後、男の子は2分ほどぼーっとしていましたが、次第に意識レベルは回復しました。母親は念のため、救急外来を受診しました。
病院の治療・手術
救急センター受診時、男の子の意識レベルは清明で、バイタルサインや身体所見に異常はありませんでした。そのまま自宅にて経過観察となりました。翌週、外来にて経過をフォローしますが異常なく終診となりました。
今回の事故では、母親が理学療法士であり、普段から誤嚥した高齢者に対応する機会が多かったため、すぐに誤嚥を疑い初期対応ができました。もし初期対応がなかった場合、長時間の窒息が続き重篤化していた可能性もありました。
予防と対策方法
今回の事故の原因は、ゼリーそのものではなくゼリーの容器です。容器の高さは2.5cm,最大直径は4.8cmです。3歳児の口腔容積を計測して作成された誤飲チェッカーでは、39mm×51mmのサイズが誤飲し得ると想定しています。誤嚥した男の子は1歳でしたが、ゼリーの容器は潰せるため小さくなっていたのかもしれません。
日本でのゼリーによる誤嚥は、「こんにゃく入りゼリー」による死亡例が報告されています。2007年には国民生活センターより行政や業界への要望は出されているものの、注意喚起や販売製造の自粛に留まっています。
諸外国には、こんにゃく入りゼリーが国内に流通することを禁じている国もあり、その理由として注意喚起だけでは十分な対策とはいえないことが挙げられています。またヨーロッパ連合では、一口サイズで口のなかに押し込むタイプのゼリー製品は、すべて誤嚥のリスクがあるとし、こんにゃく入りでなくても全面的に流通しないよう法的に規制されています。
今回のような事故を予防するため、メーカーはカップ(容器)が口のなかに入らない工夫が必要であるといえます。しかし、カップを変えても一口サイズの製品である限り、口に容器をくわえて食べる食べ方を変えることは難しく、今回のような誤飲・誤嚥は発生するでしょう。そのため、根本的な解決は困難であるといえます。
最終的には、諸外国のように製品の流通を法的に規制することも必要かもしれません。
ご家庭でできる対策は、気道異物が想定される患者と対面した際、一次救命処置を実施することです。もし子どもに窒息の可能性がある場合は、以下の処置を行いましょう。
意識がある場合:「胸部突き上げ法」と「背部叩打法」を数回ずつ交互に行います。
意識がない場合:心肺蘇生(CPR)を行いながら119番通報し、救急車を呼びます。
意識がある場合:「腹部突き上げ法」を行います。
意識がない場合:心肺蘇生(CPR)を行いながら119番通報し、救急車を呼びます。
出典:公益社団法人日本小児科学会「No.056 ミニカップゼリーのプラスチック容器の誤嚥による窒息疑い.pdf」