【No.50】ジェルボールタイプの洗剤を1歳の子どもが誤飲!対策方法は?

3 min 452 views

手術や事故の様子などショッキングな表現や画像が含まれる場合があります。

1歳の女の子が、ジェルボールタイプの洗剤を誤飲する事故が発生しました。
最終的に女の子は無事でしたが、複数回にわたる嘔吐をしており、同じような事例が多発しています。

乳幼児が身近なものを口に入れて誤嚥・誤飲する事故は、どのご家庭でも起こる可能性がある事故です。それぞれのご家庭で対策方法を学び、万が一に備える必要があります

本記事では、事故の原因や未然に防ぐための対策方法を日本小児科学会が公開した情報を元に紹介します。同様の事故が起きないように対策を学んでください。

事故発生の原因

2014年5月30日、女の子(1歳11ヶ月)の5歳の兄は、洗面所内の洗面台下の収納スペースに入れた「1回分パックタイプ洗濯用液体洗剤(ジェルボールタイプ)」を床に散らかしました。そして、女の子はそれを口の中に入れてかじってしまいました。

女の子の泣き声に気づいた母親は、女の子と手に握った3分の1ほど欠けた洗剤を確認しました。その直後、女の子は苦しみ出して3回嘔吐しました。最初の吐物は泡状で、2回目と3回目は夕方に摂取したと思われるゼリーが出てきました。

午後10時15分、母親は女の子に水を150mlほど飲ませました。そして、午後10時30分頃に日本中毒情報センターに電話して相談したところ、医療機関への受診を勧められました。

病院の治療・手術

病院到着時、すでに洗剤の摂取から2時間以上が経過していました。
女の子のバイタルサインは正常であり、異常はありませんでした。その後、しばらく観察していても全身状態の悪化はみられなかったため、帰宅可能と判断されました。事故後、約20日後に状態を再確認しましたが、特に問題はありませんでした。

なお、この事故による直接医療費は18,070円だったとのことです。

類似傷害・事故

「1回分パックタイプ洗濯用液体洗剤(ジェルボールタイプ)」を誤飲する類似障害・事故は他にも報告されています。

類似傷害・事故(2歳の男の子)

2014年6月11日、男の子(2歳6ヶ月)は「1回分パックタイプ洗濯用液体洗剤(ジェルボールタイプ)」をかじって食べてしまいました。

普段、洗剤は自宅の洗面所に設置したドラム式洗濯機の上の棚に置いていましたが、この時は洗濯機の上にタオルをおき、その上に洗剤を置いていました。詳細は分かりませんが、男の子はタオルを引っ張り、気になった洗剤を食べてしまったようです。

母親が男の子の泣き声に気づいて洗面所に行ったところ、手にかじりかけの洗剤を握っており、口からよだれを流していました。「食べたのか?」と聞いたところ、男の子はうなずきました。男の子の口からは、洗剤独特の芳香剤の臭いがしており、その後複数回の嘔吐や流延があり、病院へと救急搬送されました。

来院時は落ち着いており、補液を行うとともに牛乳を飲みました。3時間ほどの経過観察で嘔吐を繰り返すことはなく、通常の状態に戻ったため帰宅となりました。事故10日後、問題はなく元気にしています。

類似傷害・事故(2歳の女の子)

2014年6月15日、女の子(2歳4ヶ月)が自宅にある「1回分パックタイプ洗濯用液体洗剤」を1個かじり、約半分ほど飲み込んでしまいました。洗剤は薄い皮膜の中に液体が入っており、かじった時に皮膜が破れて半分は口外へこぼれ出したものの、半分は口腔内に流入しました。

その後、女の子は病院へ行き、嘔吐しました。吐物に洗剤臭がありました。女の子の身体に異常はなく、意識は清明、顔色も良好でした。胃洗浄などの処置は特に行わず、牛乳をたくさん飲ませるように指示され帰宅しました。

予防と対策方法

今回の事故の原因である「1回分パックタイプ洗濯用液体洗剤」は、2014年4月から、粉末でもない、液体でもないジェルボールタイプの「第3の洗剤」として日本でも販売されるようになった製品です。
日本で発売される以前から、欧州ではカプセル型、米国ではタブ型あるいはボール型洗剤と呼ばれて販売されていました。濃縮された洗浄力の高い洗剤の一回分を計量することなく洗濯槽に入れる簡便な製品であるというコンセプトで、その使いやすさもあって人気があります。

子どもの生活環境に新しい製品が出回ると必ず新しい事故が起きますが、「1回分パックタイプ洗濯用液体洗剤」も例外ではありません。米国中毒センターの報告によると、2013年の一年間で本剤に関する報告が5歳以下の乳幼児において10,354件ありました。
この洗剤は高濃度であるため、通常の洗剤を誤飲した程度ではみられない頻回の嘔吐、呼吸障害、意識レベルの低下、また角膜損傷の事例などが報告されています。

これら洗剤の製品の表示には「子どもの手の届かないところに置いてください」と注意喚起がなされています。しかし、この洗剤はお菓子のようにも見えなくもなく、子どもが興味を持つデザインとなっています。洗剤などの薬品は、乳幼児の手の届かない場所に置くか、鍵付きの収納ボックスなどに入れて保管するようにしましょう。

出典:公益社団法人日本小児科学会「No.050 新しいタイプの洗剤(1回分パックタイプ洗濯用液体洗剤)の誤飲による中毒(事例1).pdf

関連記事