【No.70】生後6ヶ月の子どもがベッドガードとベッドの隙間で窒息!対策方法は?

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手術や事故の様子などショッキングな表現や画像が含まれる場合があります。

0歳6ヶ月の男の子がベッドガードとベッドの隙間で窒息する事故が発生しました。
早期発見により男の子は無事でしたが、同じような事故で死亡する例も報告されています。実は、ベッドガードは生後18ヶ月未満の幼児の使用は想定されていない製品で、使用には注意が必要です。

本記事では、事故の原因や未然に防ぐための対策方法を日本小児科学会が公開した情報を元に紹介します。
同様の事故が起きないよう、それぞれのご家庭で対策方法を学びましょう。

事故発生の原因

普段、男の子(0歳6ヶ月)は普通のベッドに市販のベッドガード(L字型の一辺をマットレスの下に差し込むタイプ)を併用したもので寝ていました。母親は、以前からベッドと柵に隙間ができることを気にしており、タオルを隙間に詰め込んでいました。

ベッドガードとベッドの隙間で窒息

2016年9月7日の午前11時、母親は男の子と一緒に買い物から帰宅し、まず男の子をベッドに寝かせ、その後車内の荷物を取りに戻りました。男の子は母親の姿が見えなくなり、泣き始めました。
約2分後、母親が戻るとベッドガードが水平にずれ、マットレスとの間に10cm弱の隙間ができ、その隙間に男の子の半身が側臥位で嵌まり込んでいました。母親によると、顔面は半分程度マットレスまたはタオルケットで覆われていました。

ベッドガードとベッドの隙間で窒息

慌てて母親が抱き上げると、男の子はグッタリと閉眼し、顔面にチアノーゼを認めました。母親は脈を確認する余裕もなく、男の子を刺激しながら救急要請しました。電話を切った時点で男の子は呼吸をしていましたが、反応が鈍く、泣かない状態がしばらく続きました。

病院の治療・手術

17分後、救急隊が到着しました。その時には、ほぼ普段通りに啼泣を認めました。
病院到着時、意識は清明で明らかな神経学的異常を認めませんでした。特に検査は行わず、経過観察を指示したうえで帰宅となりました。3週間後に再診していますが、特に普段と変わりはないとのことでした。

類似傷害・事故

2017年6月10日の午後9時20分、男の子(0歳6ヶ月)は寝室で哺乳後、成人用の柵のないダブルベッド(マットレスから床までの高さ43cm)に一人で仰向けに寝かせられていました。ベッドは男の子の頭側、右側は壁に接するように配置されていました。転落防止のため、男の子の左側に枕が、足側には毛布が隙間なく積み上げていました。
30分後、母親が寝室を訪れると足側のベッドの縁より転落し、積み上げられた毛布とベッドの間に挟まっているところを発見されました。意識がなく顔色不良であったため、医療施設に救急搬送されました。

ベッドガードとベッドの隙間で窒息

救急隊到着時、自発呼吸はあったがチアノーゼを認めたためバッグバルブマスクによる補助換気が行われました。医療施設到着後、処置が行われて30分程で、呼吸、循環は安定し意識レベルも改善しました。入院3日後に行った脳波検査では異常はなく、6月17日に後遺症なく退院しました。

予防と対策方法

ベッドガード(あるいはベッドフェンス)は、主に就寝時の転落を防ぐため通常のベッドに装着する製品です。着脱が容易にできるもの、固定式のもの、フェンス部分がメッシュ状になっているもの、柵状のものなどが販売されています。

今回の事故は、仰向けに寝かされていた子どもが寝返りをした際、ベッドガードにもたれかかる状態になり、その重みでベッド柵がずれ、広い隙間ができてしまった(あるいは寝かせる前から何らかの原因で隙間ができていた)ことが原因で起きています。そして、その隙間にうつ伏せの状態で半身が嵌まり込み、身動きが取れなくなってしまい、その際にマットレスで顔面を覆われる、あるいは胸郭が挟まれてしまったことで呼吸困難に陥っています。乳幼児突発性危急事態(Apparent Life Threatening Event:ALTE)に相当すると言える事故例です。

アメリカ合衆国の大統領直属の政府機関である米国消費者製品安全委員会(the US Consumer Product Safety Commision CPSC)によると、アメリカ合衆国では2000年1月から2010年3月末の間に、ベッドガードに関連する事故情報が132件報告されています。そのうち13件は死亡事故であり、3件は今回の事例と同様に、成人用ベッドに装着したベッドガードの使用中になんらかの原因でベッドガードが水平方向にずれ、ベッドガードとベッドの隙間に乳児が挟まれた結果、死亡に至っています。この状況に伴い、CPSCは米国試験材料協会(ASTM International(旧称 American Society for Testing and Materials:ASTM))とベッドガードの基準を設け、ベッドガードとマットレスの間に子どもが落ち込む隙間ができない構造にし、安全性を確認する試験を行うことを必須要件としています。

日本でも同様の事例は発生しており、製品のリコールもありました。ASTMの基準を参考に作成された製品安全協会が定める「幼児用ベッドガード認定基準及び基準確認方法」も存在しています。この基準では、マットレスの上に15kgの質量を加えた状態で、水平方向に規定の力を加えても、ベッドガードが水平方向にずれないこと、ベッドに取り付けた際にマットレスの間に隙間がないようにすることなどが記載されており、それぞれの基準を確認する方法も記載されています。
ただし、ベッドガードの使用は生後18ヶ月から 60ヶ月が想定されており、その旨製品にも表示することが明記されています。実際、今回の事故のベッドガードにも「生後18か月未満には絶対に使用しない」と表示がありました

ベッドガードは、安全確保を目的に利用されている製品ですが、挟まれて窒息する他に柵状の隙間で頸部を絞扼する、柵を超えて転落することでより高い位置から受傷するなどの外傷が発生し得る製品です。
その反面、ベッドガードを利用することでベッドからの転落を減少させるという科学的根拠がないことが指摘されています。なお、乳児用ベッドの柵に乳児がぶつかって怪我をしないように柵に取り付ける、クッション性の高いベビーベッドガード(ベッドバンパー)は乳児の窒息の危険性を高めることが指摘されておる、米国小児科学会やカナダ小児科学会は、使用を控えるよう推奨しています。アメリカ合衆国では、州単位でオンラインも含めた販売を禁止しているところもあります。

今回の事例では、製品の注意喚起はありました。しかし、保護者は気付いていませんでした。ベッドガードの危険性を考慮し、お子さんが生後18ヶ月未満または近い年齢の場合は使用しないようにしましょう。

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出典:公益社団法人日本小児科学会「No.070 ベッドガード使用時の窒息 ロフトあるいは階段からの落下による重症頭部外傷

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