【No.2】ミニチュアダックスフンドが噛み付き、0歳の赤ちゃんの右精巣粉砕!対策方法は?

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手術や事故の様子などショッキングな表現や画像が含まれる場合があります。

0歳(生後4ヶ月)の赤ちゃんにミニチュアダックスフンドが噛み付き、右精巣を粉砕する事故が発生しました。

最終的に赤ちゃんは右精巣を摘出して退院しましたが、陰部のすべてを欠損する類似事故も発生しています。室内犬を飼っているご家庭は、事故の対策や注意が必要です。

本記事では、事故の原因や未然に防ぐための対策方法を日本小児科学会が公開した情報を元に紹介します。同様の事故が起きないように対策を学んでください。

事故発生の原因

2時00分、母親の実家の居間にて、床に敷いた布団で0歳の双子(生後4ヶ月)は昼寝をしていました。母親はふたりを寝かせたため、居間を離れます。

2時15分、祖母が様子を見に行くと、双子の弟の方が顔面蒼白でした。弟の様子を確認すると、オムツには犬に咬まれた跡があり、外陰部がいいんぶから出血していました。

2時16分、救命救急センターへ救急搬入となります。

なお、母親の実家で飼っていた犬は、ミニチュアダックスフンド(メス2歳、体長60cm、体重6kg、狂犬病ワクチン接種済)でした。

病院の治療・手術

救命救急センターの検査では、右精巣粉砕と診断されました。
右の睾丸内に挫滅組織ざめつそしきがあり、亀頭部には切りキズがありました。

破傷風の薬「破傷風トキソイド1A」を投与し、直ちに右精巣の摘出手術が行われました。

10日後、術後の経過は良好であり、0歳の男の子は退院しました。

類似傷害・事故

同様の事故として、2019年3月には0歳(生後10ヶ月)の男の子が犬に陰部を噛まれる事故が起きています。この事故では、両側陰嚢皮膚欠損、両側精巣欠損、陰茎皮膚欠損、亀頭部分欠損と診断されました。

午後11時頃、父親は3人の子ども(0歳の男の子、3歳の姉、2歳の兄)を寝室の布団で一緒に寝かしつけます。寝かしつけが終わり、父親は隣室のソファーで寝ていました。

なお、自宅にベビーベッドがありましたが、夜の就寝時には普段から床に敷いた布団に家族全員で寝るようにしていました。また、室内で飼育していた犬(シェパードとの雑種で中型犬、1年前に動物愛護団体から引き取った、狂犬病ワクチン未接種)も部屋を自由に出入りできる状態でした。

その後、母親が夜勤を終えて帰宅します。0歳の男の子が裸で泣きながらハイハイをしており、おむつと洋服は破れて血が付いた状態で床に落ちていました。母親が0歳の男の子を確認すると、陰部には出血があり、救急要請となります。
なお、父親は0歳の男の子の様子に気がつかなかったとのことです。

来院時、0歳の男の子の陰嚢いんのう・両側精巣は確認できず、亀頭もはっきりしない状態でした。
破傷風トキソイド(4混合は3回接種済)と抗生剤を投与した後、転院となります。
転院先では、直ちに手術(外尿道口形成がいにょうどうこうけいせい経皮的膀胱瘻造設けいひてきぼうこうろうぞうせつ、デブリドマン)が行われました。

手術後、肉芽にくがの盛り上がりを待ち、21日後に尿道カテーテル抜去、23日後に膀胱瘻の抜去を実施し、自排尿の確立を確認しました。
また、受傷の状況や受傷時の体重が大きく下回っていたこともあり、児童相談所により一時保護にて入院を継続しました。退院先の調整を行い、48日後に乳児院へ退院となります。

なお、日本小児科学会のレポートによると、直接医療費は約3,000,000円だったとのことです。

予防と対策方法

近年、犬を室内で飼う割合が増え続けており、2019年には飼い犬の86%が室内犬となっています。
しかし、環境省自然環境局の調査によると、犬咬傷いぬこうしょうの事故件数は年々減少しているものの、2018年度の被害者は4,384人おり、死亡例も毎年3人程度報告されています。

小さな子どもは犬咬傷の対象になりやすく、その平均年齢は7.3歳、うち男の子の割合が3分の2を占めています。
また、4歳以下の乳幼児の約40%が頭や顔を咬まれており、小学生以上になると四肢を咬まれること多くなります。この結果から、犬の顔の高さに幼児の顔があること、また犬に押し倒されて咬まれていることが推察されます。

今回のような陰部咬傷いんぶこうしょうは、1.4%と稀な事故です。
犬による陰部咬傷をまとめた報告によると、陰部咬傷の21例中19例が男の子で、そのほとんどが精巣欠損などの重篤な結果となっています。
そのうち乳児の割合が3割を占めており、これは乳児が自力で移動できない結果だと推察されます。また、犬がおむつの尿臭をエサと勘違いするとの報告もありますが、詳細は不明です。

ミニチュア・ダックスフンドが陰部咬傷した事故例は2件あり、小型犬であっても決して安全とはいえません。
また、ゴールデンレトリバーによる8ヶ月の女の子の死亡例もあります。温厚と思われる犬種であっても抵抗できない乳幼児と犬を一緒に放置しておくことは大変危険です。

一般家庭で実践できる対策は、短時間でも小さな子どもと犬を一緒に放置しないことです。
室内犬を飼う場合はペットゲート、サークル、ゲージを用意し、乳児はベビーベッドで寝かせることを徹底してください。

また、犬の去勢にも効果があります。犬の去勢は犬の持つ攻撃性やストレスを軽減します。
室内犬を飼っているご家庭は事故の可能性を考慮して、家族が安全に暮らせる対策をしておきましょう。

出典:公益社団法人日本小児科学会「No.002 犬による外陰部外傷

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