みなさん「モンテッソーリ教育(モンテッソーリメソッド)」は知っていますか?
子育てに熱心な方なら1度は聞いたことがあると思いますが、調べてみてもよくわからなかったり、実際にどうやったら良いかわからない方も多くいます。
欧米ではかなり普及している教育方法で小学生を中心に中学から高校まで実践されていますが、日本ではまだまだ認知度が低く、一部の施設で乳幼児を対象に行われているのが現状です。
モンテッソーリ教育とは、「子どもには自分を育てる力がある」という「自己教育力」の考えを根底に考えられた教育法です。
子どもは生まれながらにして知ることを強く求めており、よく考え整えられた支援的な学習環境の中にいれば子どもは自発的に学び始める力を持っています。
この記事では、モンテッソーリ教育の全体像をできるだけわかりやすく簡単に説明し、最後に保護者の方がご家庭で実践できる大切なポイントをまとめています。
モンテッソーリ教育は医学的・科学的な教育方法であるため、難しい言葉が出てくることがあります。そんな時はSNSでシェアしたり、お気に入りに登録して繰り返し読み直すのがおすすめです!
- 直接的な天才児教育ではない
- 医学的・科学的な発達モデルに基づいた心と身体の健全な教育方法
- 子どもが自主的に集中して学べる環境作りをする
- 生涯学び続ける姿勢を持った自立した人間になる
- 他人への気づかいや思いやりができる人間になる
まずは簡単にできることから始めてみましょう!実践しながら子どもが大きくなるにつれて、少しづつ理解を深めていけば大丈夫です。
目次
モンテッソーリ教育とは
モンテッソーリ教育とは、子どもが自ら自分を育てる能力「自己教育力」を最大限発揮させる環境や教具(明確な目的をもつ玩具教材)を用いて、生涯学び続ける姿勢を持った自立した人間を育てる教育です。
自立しているだけでなく有能で責任感があり、他人を思いやる心をもった人間に育てることも目的の1つにあります。
イタリアの医師「マリア・モンテッソーリ」が考案
イタリア出身の医師「マリア・モンテッソーリ」(1870~1952年)により生み出された教育法です。モンテッソーリは女性として初めて医学博士号を取得した才女でした。
大学卒業後はローマの精神病院で医師として働き、その中で知的障害児に感覚教育法を行い知的水準を上げるという効果を出しました。
その後、障害を持たない子どもの教育にも活かせると考え研究を続け、モンテッソーリ教育法を確立させました。
モンテッソーリ教育の現状(海外・日本)
モンテッソーリ教育は欧米を中心に世界各国で取り入れられています。
特に、アメリカ合衆国では2度にわたってモンテッソーリ教育ブームが起こり、その教育方法はアメリカ全土に普及しました。欧米ではモンテッソーリ教育に取り組む小学校が多く、中学校や高等学校でも取り入れています。
一方、日本では1960年代に紹介されてから現在までに60年以上の歴史がありますが、日本における教育対象は就学前の乳幼児が主な対象となっており、欧米に比べるとあまり普及していません。
モンテッソーリ教育の基本
モンテッソーリ教育は、大人が教えて育てるものではなく、子どもの「自主性(independence)」を尊重して行う方法(メソッド)です。
小さな子どもは、その無力さゆえに社会においては行動の自由が制限された状態にあります。
子どもが自主的に自由に学べるようにするには、子どもの成長をさまたげる環境をできるだけ軽減・排除し、子どもにとって合理的で適切な教具や環境を整えることが大切です。
もちろん安全に配慮して遠くから見守ることも必要です。
年齢に適したモンテッソーリ教具・教材
モンテッソーリ教育では、「教具(きょうぐ)」と呼ばれる個性的な教材を使用します。
教具とは、学習目的を具体化して効果的に理解を深めるための道具であり、子どもの年齢や成長に合わせて選ぶ必要があります。
購入やレンタル、また手作りできる教具もあります。詳しい内容はこちらの本がおすすめです。
※人気のおすすめ教具については別記事で紹介します。記事の公開はTwitterにてお知らせします。
また、教具はいつでも見える棚などに並べて、自分で好きなものを選んで使えるようにしておくのがおすすめです。
例えば、子ども用サイズのデスク付き棚であれば、ディスプレイができるだけでなく、机の上でお仕事ができたり、コンパクトにお片付けもできます。
教育環境に必要な6つの特徴
基本的な人間の特性、発達モデルに基づく年齢別の特徴、子どもの個性に合うように準備された環境の中でこそ、子どもは自由に活動して最大の効果を発揮します。
教育環境に必要な6つの特徴は次の通りです。
- 移動・活動がしやすい
- 調和のある美しいデザイン
- 清潔で整理整頓されている
- 自然由来の材質のみを使用(プラスチックよりも木やガラスなど)
- 子どもの体格や行動に見合った家具や設備のサイズ感
- 室内外に自然がある
まずは、最も多くの時間を過ごす家の環境を整えることが大切です。
家具や教具を取り揃えるだけでなく、観葉植物を置いてみたり、壁に絵を飾ったり、季節にあわせた生花を活けることで豊かな感性を育みます。
このように家の環境を整えることは、子どものためだけでなく家族にとっても快適で豊かな心にする効果があります。
また、責任感や思いやりが育まれるように、子ども同士が交流できる環境に身を置くことや、祖父母や親戚などとの交流も大切です。
モンテッソーリ教育のメリット・デメリット
モンテッソーリ教育には、メリットだけでなくデメリットもあることを知っておきましょう。
特徴的な性質は次の通りです。
- 個性を伸ばせる
その時に興味のある教具を自由に選ぶことができるため、自然と個性を伸ばせます。 - 自主性・自発性が身に付く
自分で判断して行動し、教具で学んだり日常生活を送る習慣が身に付きます。自発的な経験は、積極性も養います。 - 集中力が身に付く
好きなことを1つ選んで取り組むため、自然と集中力が身に付きます。 - 学ぶ力と自信が身に付く
少し難易度が高いお仕事を試行錯誤しながらクリアしていくことで、小さな成功体験が得られ、自信が身に付きます。 - 年齢にとらわれない関係が作れる
教室では異なる年齢の子どもたちが1つのクラスにいるため、年齢にとらわれずコミュニケーションを取ることができるようになります。 - 社会性が身に付く
1人1人が異なるお仕事をする教室にいることで、相手の個性を尊重することができます。 - 手先が器用になる
教具は手先を細かく動かして使用するものが多いため、手先が自然と器用になります。 - 情緒が安定する
自分がやりたいことを気が済むまで思う存分できるため、ストレスを溜めることなく落ち着きが生まれます。自然と落ち着いた性格になる傾向があります。
- 協調性や集団行動が苦手
個性や多様性を認める教育方法のため、周りにあわせて同じことをするのが難しくなる場合があります。 - 運動不足になる
お仕事は基本的に室内で行うことが多いため、運動不足になる場合があります。 - 活発な子には向かない
走ったり運動をすることが好きな性格の子どもには向かない場合があります。 - 他人に頼ったり甘えるのが苦手になる
集中してお仕事に取り組んでいたり、自分の力の自信過剰になりすぎると、他人に質問したり頼るタイミングがわからなくなる場合があります。
上記のメリット・デメリットは、必ずしもすべての子どもに当てはまるわけではありません。
子どもの行動や成長具合をしっかりと観察し、タイミングに合わせた環境を用意することで最大の効果が得られます。
また、デメリットに関してはそれぞれの項目に合わせた対策方法を行うと良いでしょう。
例えば、友達と同じ習い事をさせてみたり、体を動かすチームスポーツのクラブに参加するなどの方法があります。
年齢に合わせたモンテッソーリ教育理論とポイント
モンテッソーリの教育理論は、子どもの発達モデルに基づいた教育法を基本としています。
発達モデルには6歳ごとの年齢別に次の4段階あります。
第1段階(0〜6歳)
発達モデルの第1段階は、0歳〜6歳までの期間です。重要なキーワードが3つあります。
① 吸収心
「吸収心(きゅうしゅうしん)」とは、あらゆる刺激や情報を吸収して成長する力のことです。
乳幼児期の子どもは、五感・言葉・文化など、環境からの知覚的刺激や情報をゼロの状態から難なく吸収して成長します。
一方で、6歳になるにつれて吸収心は薄れていくため、この6年間の教育は非常に重要であると考えられています。
② 敏感期
特定の刺激に対して特別な感受性をもつ期間であることを「敏感期(びんかんき)」としています。0〜3歳と3〜6歳で異なる敏感期が見られます。
この特別な感受性により感情や心情が乱れることのないように、適切な教具(おもちゃ)や周囲の環境を整えることが大切です。
例えば、大人の手を借りずに1人で物事をこなしてみたいことがあったり、昨日は食べた食事でも微妙な味の違いを感じて今日は食べなかったりと、様々な心情を見せます。
もし子どもが自然に行おうとする成長意欲や欲求が満たされないと、乱暴になったり、うそをついたり、大人に過度に依存するようになったり、無気力になったりしてしまいます。
この望ましくない状態を「逸脱(いつだつ)」と言います。
③ 正常化
前述の逸脱(いつだつ)状態から望ましい状態に成長していくことを、「正常化(せいじょうか)」言います。3歳〜6歳の子どもに生じる心理的状態です。
自発的なお仕事・遊びに深く集中し、繰り返し達成することによって逸脱状態が徐々に見られなくなるようになります。
その先には、規律を守ったり他者を思いやる協調性が出てきたりといった姿も見られるようになります。
第2段階(6〜12歳)
発達モデルの第2段階は、6歳〜12歳までの小学生の期間です。
身体的には乳歯が生え変わって身長も伸びるといった変化・成長があり、心理学的には「群れの本能」により友達を作って一緒に行動するといった社交的になる傾向があります。
また、物事になにかと理由付けをするようになったり、想像力も豊かになります。
よって、第2段階の子どもがすべきことは、知的な自立・道徳観を身につける・社会組織の形成をするの3つが必要であると考えられています。
第3段階(12〜8歳)
発達モデル第3段階は、12歳〜18歳までの中学生・高校生の期間です。
身体的にも精神的にも変化の大きい思春期と青年期があります。
この時期の子どもは、精神的に不安定になったり、集中力の面で困難になる場合もあります。一方で、創造的な傾向が表れるようになったり、特に正義感と個人的尊厳感の発達が見られます。
また、思春期の若者は、自身の価値を外部の評価から得ようとする衝動があり、これを「価値付け」と言います。
よって、第3段階の子どもがすべきことは、社会における大人としての自己の構築です。
第4段階(18〜24歳)
発達モデルの第4段階については、マリア・モンテッソーリはほとんど書き残していませんでした。教育プログラムは開発されておらず、人によっては生活のために働いてお金を稼ぐようになる年齢でありでもあり、目的によって教育の方向性も異なります。
この記事では詳細を割愛します。
0歳〜6歳の敏感期に最適な5つの教育分野
0歳〜6歳の第1段階におけるモンテッソーリの幼児教育には、発達段階に合わせた敏感期に対応する5つの分野があります。
吸収心(言語や物事を習得する力)は6歳に近づくにつれて徐々に薄れていくため、この期間の幼児教育は特に重要です。
また、モンテッソーリ教育では、子どもの活動のことを「お仕事(おしごと)」と呼びます。
①日常生活の練習
着替えなど自分の身の回りのことや、手を丁寧に洗う、お茶を入れて飲む、細かいとこまで掃除をする、洗濯をするなど、大人が普段当たり前にやっていることを練習しながら身体運動の獲得と自立心を養います。
また、使用する物のサイズは子どもに体格に合わせたものにし、材質は自然の物やガラスなど本物を使うことが大切です。デザインや自然の美しさを感じながら、壊れやすい物でも慎重に扱うことに慣れていきます。
特に1〜2歳の子どもは運動の敏感期にあたります。初めは上手にできなくても、指先や身体を思い通りにコントロールできるようになってくることで自信と自立心が育まれます。
②感覚の教育
同じような物でも、長さや重さ、大きさが違うという抽象的な感覚を理解していきます。五感を通して、触ったり・聞いたり・嗅いだりしてたくさんの体験をしておくことが重要です。
特に、3歳頃になると多くの子どもは感覚器官が発達することで外部からの感覚刺激に対して敏感になります。ストレスにならないように、お仕事に集中できる環境作りが求められます。
③言語の教育
子どもは耳で聞いて言語を習得するだけでなく、大人の真似をして書いたり読んだりしたいという欲求があります。身近にある物の名前や文字から習得しはじめます。
言語の習得スピードや語彙力の豊かさは、環境における言葉の量・質に左右されます。年齢に合わせて絵本や文字カードなどの教具を活用し、読み書きにも繋げていくことが大切です。
④数の教育
多い・少ないといった抽象的な感覚教育を経て、具体的な数という概念に導くことが大切です。目で見て手で触れながら学べる教具がおすすめです。
⑤文化の教育
わたしたちが暮らしている日本や世界がどんなところなのか、また、歴史・地理、音楽・美術、動物・植物など、それぞれの地域の特色や文化についても学びます。
日本地図や世界地図に色を塗って世界を感じたり、実際に体験できる教具がおすすめです。
モンテッソーリ教育を受けた著名人・成功者
モンテッソーリ教育を受けていた著名人や成功者は、早くからその教育法が注目されていた欧米において多くの著名人がいます。また、日本では乳幼児における教育が主ですが、欧米ではモンテッソーリ教育に取り組む小学校が多く、中学校や高等学校でも取り入れられているという違いがあります。
IT系企業では、Amazon.comの創業者「ジェフ・ベゾス」や、Google創業者の「サーゲイ・ブリン」と「ラリー・ペイジ」が有名です。
歌手ではグラミー賞受賞の「テイラー・スウィフト」、スポーツではNBAの「ステフィン・カリー」、その他には芸術面で活躍した人やノーベル文学賞を受賞した作家も多くいます。
日本では、中学生でプロデビューを果たした日本の棋士「藤井聡太」さんが通っていた幼稚園がモンテッソーリ教育を導入していたことで有名です。
モンテッソーリ教育は学習面だけでなく、想像力・創造力を生かした芸術やスポーツなどの活躍においても有効な教育法である可能性があります。
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モンテッソーリ教育のよくある質問(Q&A)
ある研究では、現代的に応用された教育よりも、元々の原則を忠実に守った古典的なモンテッソーリ教育の方が有効であるという結果があります。
直接的に天才児を育てる教育方法ではありません。現代に合わせて応用された一部の教育法ではそのように教えられている場合がありますが、モンテッソーリ教育は医学的・科学的に基づき、子どもの成長過程に合わせた教育法です。
しかし、モンテッソーリ教育を受けた成功者や著名人が多くいるように、何かに秀でた才能を発揮する可能性はあります。
小さい頃から自発的に集中してお仕事に取り組む姿勢を身につけてきた子どもは、1つのことを粘り強く、自分で工夫・改善しながら取り組むことができるようになっているはずです。
その結果、天才と呼ばれる成果を生み出すこともあります。
モンテッソーリ教育は宗教との関係はありません。モンテッソーリ教育法を確立したイタリアの医師の「マリア・モンテッソーリ」はキリスト教徒でしたが、その教育法は医学的・科学的な人間の発達モデルに基づいて行われています。
日本や欧米など、人種や宗教問わず世界各地で注目されている教育方法です。
親がスパルタ教育するような早期教育ではありません。子どもに本来備わっている自分を育てる能力「自己教育力」を最大限発揮できるように、子どもの成長に合わせた環境づくりによって身体と心の健全な発育・発達を促します。
いいえ、モンテッソーリの教具には手作りできるものもたくさんあります。また、着替えや掃除、料理のお手伝いなどといった日常生活も教育の一つです。
保護者ができることは、モンテッソーリ教育の基礎知識を身につけ、子どものことをよく観察しながら日々成長に合わせた改善をしていくことです。
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モンテッソーリ教育の方法まとめ
モンテッソーリ教育とは、医学的・科学的な発達モデルに基づく教育法です。
つまり、年齢に応じた身体的・心理学的な傾向や特徴を知ることで、子どもの成長をサポートすることができます。
また、子どもの成長スピードは人それぞれであり、個性もあるため必ずしも一様ではありません。教具もいろいろなメーカーや研究機関が開発していたり手作りもできるため、教育の正解は1つではありません。
最後に、「子どもには自分を育てる力がある」という自己教育力があることを忘れないでください。
親が知育や教育に熱心になりすぎると、逆に学ぶことが嫌いになってしまう子になるケースがあります。
気合を入れすぎる必要はなく、子どもの成長段階が今どこにあるのかを観察しながら、それに合わせて子どもが快適に学べる環境を整えていくことが大切です。
- 「積極的」にリードするよりも「消極的」であること
- 自主性を発揮できる環境を整える
- 教具を使うだけでなく日常生活や他人との関わり合いも大切にする
- 教える時は命令口調ではなく自発的にやりたくなる言葉選びと雰囲気を作る
- 時には大人を頼ったり甘えられるようにする
具体的な実践ノウハウや事例については以下のの4冊がおすすめです。