ゲームは子どもの頭が悪くなるとかならないとか。
そういった議論の結論は今でも曖昧です。
少し前には、香川県が「ゲーム1日60分」までとする条例を成立させるなど、科学的な根拠(エビデンス)によらない結論を出していました。
そこで、子どもの脳機能を調べた最新の研究(2022年10月24日に公表)によると、ビデオゲームをする子どもはゲームをしない子どもよりも、記憶力が良く運動能力もよりよくコントロールできるとの研究結果が導き出されました。
この結果は必ずしもビデオゲームが原因でない可能性もありますが、今回の研究による調査結果で高いパフォーマンスを示したことは事実です。
このような研究は、今後のビデオゲームをプレイすることと脳の発達との関連性について、私たちの理解を深めるものとなります。
研究の詳細について簡単にわかりやすく解説します。
目次
研究の対象について
今回の研究は、アメリカ合衆国で2018年に開始されました。
研究対象は、何千人もの子どもたちの脳を成人期に成長するにつれて長年研究している「思春期の脳の認知発達研究(Adolescent Brain Cognitive Development (ABCD) study)」のデータを使用しました。
研究対象の子どもは定期的に一連のテストを受けており、これには脳の撮像、認知タスク、メンタルヘルススクリーニング、身体的健康検査などが含まれます。
研究の方法について
ビデオゲームと認知の関連を研究するために、ABCD研究の一連の評価を利用しました。
これには、9歳と10歳の合計2,217人のデータが使用されました。
ABCD調査では、対象の子どもに平日または週末にビデオゲームを何時間プレイしたかを尋ねました。
そして、週に21時間以上プレイした子どもたちを「ビデオゲーマー」、週にビデオゲームをまったくプレイしなかった子どもたちを「非ビデオゲーマー」として、2つのグループに分けました。
たまにしか遊んでいない子どもは、研究に含まれていません。
そして、これらのグループに含まれる子どもたちに対して、注意、衝動制御、および記憶を測定するテストで成績を調べました。
研究の結果について
結論から言うと、「ビデオゲーマー」のグループに属する子どもたちの方が、テストでより良い成績を収めました。
「ビデオゲーマー」と「非ビデオゲーマー」を比べると脳の活動パターンに違いがあり、テスト時には注意力と記憶力に関連する脳の領域でより多くの活動の違いがありました。
一方、メンタルヘルスの測定に関して2つのグループに違いはありませんでした。
まとめ
今回の研究では、ビデオゲームが子どもの与える影響について次の結論となりました。
- ビデオゲームによって、注意力と記憶力が高まる可能性が見出された。
- ビデオゲームは暴力的になるなど、感情的な健康に悪いという広範な懸念に反論する証拠が増えた。
今回の結果は一つの研究事例であり、年齢層によっても異なる結果となる可能性があります。
また、今回の調査ではプレイしたゲームの種類については訪ねておらず、ビデオゲームをすることが脳機能に必ずしも良い影響を与えるかどうかについては明らかではありません。
ですが、ゲームを一方的に制限するのも正しい考え方ではないことも事実です。
今後も新たな研究に注目が集まります。
出典(研究論文):Association of Video Gaming With Cognitive Performance Among Children