子育て奮闘記のエッセイ漫画「毎日かあさん」の作者である漫画家の西原理恵子さん(57)の娘が、幼少期から母親の作品のために、自身が嫌がっているにもかからず個人情報を公開させられ続けてきたことへの精神的苦痛などをつづったブログが公表されました。作中では主要キャラ「ぴよ美」として描かれています。
目次
娘の告発内容
娘のブログには次のような告発があります。
(ブログは話題になり過ぎたため現在は非公開となっています。)
- 「お母さんは何を思って私の許可無く、私の個人情報を書いて、出版したんだろう」
- 「個人情報をつかって印象操作をしたり、人が嫌がっていることを無理矢理することはぜったいに許されることじゃない」
- 「お母さんは書かないでと言ったことをsnsに書いた」
- 「私の個人情報をばらした上に私のメンタルを壊して」
さらに西原からは、12歳のときに整形手術を強要されたり、暴言を吐かれたりしていたなどと綴り、物議を醸していました。また、精神科にも通っていたそうです。
Aさんの一連の告白を受け、西原に対しては毒親という厳しい声も寄せられていますが、Aさんが西原について書いている内容については親子間の話であり、どこまで真実であるのかは当人たちにしかわかりません。
子どものプライバシーを守る権利は?
考えなければならないのは、子どものプライバシーがどこまで守られるかということです。
今回は著名な方による人気作品のため、一般の方が育児アカウントとしてSNSで発信するケースとは異なりより深刻な問題となる特殊事例でした。
それでも一般の方と共通なのは、ネット社会以前にも世間話として自分の子どもの失敗エピソードなどを地域の保護者間で話すことはあり、多くの場合そのようなエピソードは子どもの同意がなく勝手に話されています。
一方で、幼稚園・保育園や学校生活での様子を、先生と親が相互に情報を開示し合うことは、同様に子どものプライバシーを侵害しながらも、それが望ましいと言わざるを得ません。
今のところ子どものプライバシーを完全に守るような法律はありません。これまで、親による子のプライバシー開示が心理的虐待に該当する可能性について、さほど深刻視してこなかったこと理由の1つとしてあります。
また、育児ブログやアカウントはネガティブな理由で行っていないのが通常であって、内容としても育児におけるありふれたエピソードが主に展開されるため、子のプライバシーという観点から深刻にとらえにくい面もあります。
参考:親に勝手にSNS投稿され苦痛、子どもに止める権利はある? 西原さんのエッセイめぐり話題に – 弁護士ドットコムニュース
SNSで情報を発信することにより救われる人もいる
現代社会の育児環境では、孤立しがちな親が多くいます。
SNSで気軽に発信し、同じ環境にある人や経験者とコメントなどで意見交換することで、1人ではないと感じたり、励ましの言葉をもらえることが力になる場合もあります。
そうした中で、SNSで発信することが一概に悪いとは言えません。ただし、自分の愛する子どものプライバシーについてはよく考え、気がつかないうちに深刻な児童虐待にならないように注意する必要があります。
この問題はSNSで発信する本人の問題だけでなく、急速に発展するインターネット社会のリテラシーや方体制など、さまざまな視点でのバランスが大切です。
SNSには、行き過ぎた行為やプライバシーの侵害などについて運営に報告する「報告システム」があります。アンチコメントなどで過度に否定するよりも、 そのようなシステムを活用して社会全体でインターネット社会をより良くしていく仕組みも大切です。
なお、「毎日かあさん」は現在も出版されており、アニメも配信されています。
2002年から16年にわたり毎日新聞で連載され、コミックスの発行部数は230万部(2017年時点)に上り、文化庁メディア芸術祭優秀賞(漫画部門/2004年)、手塚治虫文化賞(短編賞/2005年)を受賞しています。
まとめ
子どもについてSNSで発信する際は、プライバシーの開示をどこまでにするか明確する必要があります。
その判断基準は人により異なり、子どもが大きくなれば話し合って決めることもできますが、成人するまでは親の監督下・責任下にあります。子どもが同意していたとしても、その時に本当に正しい判断ができていたかどうかはわかりません。
今ではYouTube動画、TwitterやInstagramなどのSNSなど簡単に不特定多数に向けて発信できる場が多くあります。
このようなSNSでは、第三者からコメントや運営に報告できるシステムや、プライバシー設定により公開範囲を限定できる機能もあります。
子どもの権利やプライバシーを考えるのと同時に、親子で一緒にネットリテラシーを学んでいける環境も今後は重要であると考えられます。